サクリファイス(1986) 感想・レビュー 3件

さくりふぁいす

総合評価5点、「サクリファイス(1986)」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-06

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

あまりに早い最期だったアンドレイ・タルコフスキー。
この「サクリファイス」が、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した7か月後に、タルコフスキー監督は逝った。
1986年12月28日だった。

「鏡」で、草原を渡る"風"を描いた。「ノスタルジア」で、この世とあの世の間を取り持つ"水"を描いた。
「サクリファイス」では、自分の投影でもある家を焼き尽くす"火"を描いた。

それらは、あまりに美しく、何度も観たい思いにかられ、観るたびに、ある種の"不思議"に包まれる。

アンドレイ・タルコフスキー監督の故国ロシアへの愛は、「ノスタルジア」で思いきり描かれていましたが、この「サクリファイス」では、その思いがもっと重く、胸にのしかかってきます。

タルコフスキー監督は、私たちに何を伝えようとしたのか?--------。
彼の映画には、いつも「死」と「神」とがつきまとう。
全てのものは、象徴されてそこにある。
時には風景までもが、象徴の一端を担っている。

喉の手術で声の出ない息子に、父アレキサンデルが海岸に枯れ木を植え、「毎日、水をやるんだよ」と言う。 その日はアレキサンデルの誕生日でもあった。親友の医師、不思議な郵便配達人もやって来る。 その夕方、唐突に核戦争が勃発したというニュースが流れると、妻はヒステリーを起こし、子供も手術の痛みに苦しんで寝ている。 アレキサンデルは、無神論者だったが、つい神に自分を犠牲にするから彼らを救ってくれと祈るのだった--------。 この「サクリファイス」は、スウェーデンの俳優・スタッフによって撮影されています。 しかし、タルコフスキーは言う。「この映画は、スウェーデンでスウェーデンの俳優によって演じられたが、これはロシア映画である」と。 青い空と海、白い道と緑の野、道端に枯れそうな一本の貧弱な木。 そして、父と喉の手術をしたばかりで声の出ない幼い息子。 父は息子に「昔偉い坊さんが、若い僧に、枯れ木に毎日決まった時間に水をやりなさいと言った。それを忠実に守って水をやっていると、枯れ木が生き返ったんだよ」と、話して聞かせます。

この映画の舞台にタルコフスキーが選んだのは、スウェーデンのゴトランド島だ。遥か海を隔てれば、故国ロシアの大陸がある。 海はタルコフスキーの、心の距離を縮めていただろうか?-----。 そして、撮影されたのは、海岸より少し外れた場所らしく、白い砂と松林の海岸が延々と続いている。 そこはあくまでも静かで、平らで、そんな時ふと恐ろしい感覚にとらわれるのは、「サクリファイス」のように、静かな地面の底から地響きが聞こえ、核戦争が始まったのが本当のことなのではないかと、愚かしい想像をめぐらしてしまう時だ。 幼い息子は、父が精神病院に送られてしまってから、父の言いつけに従って、海岸の枯れ木にバケツでせっせと水を運んではかける。 そして、木の根元に寝そべって、空を見上げ「なぜ、はじめに言葉ありきなの、パパ?」と今はもういない父に問うのだ。 父が果たした"犠牲"への報酬は、この子のこの言葉にあったのだろうか? 白い砂浜と青い空は、無情なまでに強烈で、炎上する家の炎の色と、妙に相容れない不協和音が、「サクリファイス」の崩れ折れそうなイメージを残すのだ。

P.N.「水口栄一」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-04

サクリファイスを観て、とても感動した。私は昔からアンドレイ・タルコフスキー監督の大ファンなのだ。ノスタルジアを初めて観た時の衝撃は決して忘れることができない。それだけにこの映画もひじょうに興味深かった。これは何よりもスクリーンが美しくて、いつの間にか不思議な世界に吸い込まれていく魅力があった。私はたまたま田中小実昌さんがこの映画の解説をされているのを観たが、その中でこれはみずみずしい映画だと仰っていた。私もまったく同感である。みずみずしい映画として楽しめば、それでいいということだが、私もほんとにその通りだと思った。これは何度も観たくなる作品だ。素晴らしいの一言に尽きると思う。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2019-11-01

イングマール・ベルイマン監督組の撮影スヴェン・ニグベストの秀麗なカメラワークと残酷な迄に美しい映像美で迫る。早稲田松竹で満席状態

最終更新日:2024-06-16 16:00:02

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