ブロードウェイと銃弾 作品情報
ぶろーどうぇいとじゅうだん
芸術肌の劇作家デイヴィッド(ジョン・キューザック)にプロデューサーのマルクス(ジャック・ウォーデン)が出資者を見つけた。ギャングの親分ニック(ジョー・ヴィテレリ)で、女優志願の愛人オリーヴ(ジェニファー・ティリー)にせがまれたのだ。ニックは怖いしオリーヴは超大根、と現実はキビシいが、デイヴィッドは開き直って最高の俳優を要求、主演に大女優ヘレン・シンクレア(ダイアン・ウィースト)、相手役に名優ワーナー・パーセル(ジム・ブロードベント)を獲得、稽古が始まる。この舞台が久々のカムバックになると踏んだヘレンは、自分の役にもっと色気が欲しくてデイヴィッドを籠絡する。オリーヴの警護役チーチ(チャズ・パルミンテリ)は彼女のキンキン声にも、デイヴィッドの観念的過ぎる芝居にもうんざり、ある日演出に口を挟む。チーチにみんな賛成するのでデイヴィッドは面白くないが、しかし彼の指摘は的確、そこで彼に書き直しを“手伝って”もらう。チーチの改訂は大評判、ヘレンはデイヴィッドを前途有望と見て愛人にする。オリーヴはワーナーと浮気、ワーナーは持病の過食症が始まり太りだす。ボストン初演は大好評だがチーチはオリーヴが俺の芝居を台無しにしたと怒る。デイヴィッドは恋人のエレン(メアリー・ルイーズ・パーカー)にヘレンとの情事を問い詰められる。チーチはオリーヴを波止場に連れだし射殺する。デイヴィッドは君に道徳はないのかとチーチを責めるが、彼は俺の芝居を傷つける奴は許さないと断言する。道徳について複雑な心境になったデイヴィッドはエレンに浮気を告白するが、彼女はフレンダー(ロブ・ライナー)と寝てるから構わないと言う。ブロードウェイ初日、オリーヴ殺しの真相を知ったニックはチーチに刺客を差し向け、上演中の舞台裏で撃たれた彼はデイヴィッドにラストシーンの新しい台詞を託して死ぬ。批評家たちはデイヴィッドを称賛するが、自分は芸術家でないと自覚した彼はエレンの所に戻り、一緒に故郷に帰ろうという。エレンは自分が愛したのは芸術家ではなく人間のあなたと答え、二人は再び結ばれる。
「ブロードウェイと銃弾」の解説
才人ウディ・アレンが“狂騒の20年代”のブロードウェイ演劇を舞台に描く、軽妙洒脱なバック・ステージ・コメディ。製作スタッフはアレン作品の常連が固め、製作は「ザ・フロント」以来のつきあいのロバート・グリーンハット、ほかにプロデューサーとしてヘレン・ロビンや「泥棒野郎」以来のジャック・ロリンズとチャールズ・H・ジョフィも名を連らねる。脚本はアレンとダグラス・マクグラスの共作。撮影は「ハンナとその姉妹」以来アレン作品の大半を手掛けるイタリアの名匠カルロ・ディ・パルマ。編集は「マンハッタン(1979)」以来の常連スーザン・E・モース。美術は「スターダスト・メモリー」の衣装から「ラジオ・デイズ」で美術に転じたサント・ロカスト。衣装はその助手を経て「ブロードウェイのダニー・ローズ」以来全作品を手掛けるジェフリー・カーランド。出演は「ウディ・アレンの影と霧」のジョン・キューザック、アカデミー助演女優賞を受賞した「ハンナとその姉妹」はじめ80年代のアレン作品の常連だった「リトルマン・テイト」のダイアン・ウィースト(本作で再度同賞受賞)、「ブロンクス物語 愛に包まれた街」のチャズ・パルミンテリ、「ゲッタウェイ(1994)」のジェニファー・ティリー。他に「依頼人」のメアリー・ルイーズ・パーカー、「プレタポルテ」のトレイシー・ウルマン、「クライング・ゲーム」のジム・ブロードベント、「ジャック・ルビー」のジョー・ヴィテレリ、「ギルティ 罪深き罪」のジャック・ウォーデン、「ノース ちいさな旅人」の監督ロブ・ライナーほか。キネマ旬報外国映画ベストテン第7位。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1995年7月15日 |
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キャスト |
監督:ウディ・アレン
出演:ジム・ブロードベント ジョン・キューザック ハーヴェイ・フィアスティン チャズ・パルミンテリ メアリー・ルイーズ・パーカー ロブ・ライナー ジェニファー・ティリー トレイシー・ウルマン ジョー・ヴィテレリ ジャック・ウォーデン ダイアン・ウィースト |
配給 | 日本ヘラルド映画=ヘラルド・グループ |
制作国 | アメリカ(1994) |
上映時間 | 99分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-19
このウディ・アレン監督の映画「ブロードウェイと銃弾」は、1920年代のブロードウェイ演劇の世界を題材にした、いわゆる”バックステージ”ものの傑作だ。
お話自体は、一見古めかしく、例えば、芝居の資金を出すギャングが自分の愛人に大役をつけろと要求する。
そして、この愛人というのがどうしようもない女で、芝居も下手で、主人公の脚本家兼演出家は、「芸術か、出世か」の板挟みに苦しむというように、型通りに展開していくのだが、この映画が素晴らしいのは、何と言ってもそのキャスティングの妙に尽きると思う。
伝説的な女優に扮したダイアン・ウィーストと、それから思いがけず作家的な才能を開花させてしまうギャングに扮したチャズ・パルミンテリが素晴らしくうまく、そしておかしい。
この映画の主人公は、昔だったら監督のウディ・アレン自身が演じた役どころだと思うが、その役を演じたジョン・キューザックは、”受けの演技”を無難にこなしていて、彼とダイアン・ウィースト、あるいは彼とチャズ・パルミンテリの、一対一の芝居の場面が、グーッと惹き込まれてしまう、充実した寸劇になっていると思う。
やはり、うまい人同士の芝居って、こんなにも観ている我々を、楽しく贅沢な気持ちにさせてくれるものだと、つくづく思ってしまう。 「俺はアーチストだ!」とわめいていたジョン・キューザックが、実際には妥協に妥協を重ね、ギャングのチャズ・パルミンテリが、実際には「美しい芝居」のためには、人殺しも辞さない----という皮肉は「芸術的良心」なるものの”本当の怖さ”を知っているからだと思う。 この映画に登場して来る女たちが、ハイ・テンションのやっかいな女たちばかりで、それをシリアスにではなく、喜劇的に描き出しているところにも感心させられた。 そして、今までだったら、モノクロ画面にしたところだろうが、わざとセピアがかったカラー画面にしたのにも驚かされた。 やはり、こうしたところにも、ウディ・アレン監督のセンスの良さを感じてしまう。
尚、この映画で伝説的な女優を演じたダイアン・ウィーストが絶賛され、1994年度の第67回アカデミー賞で最優秀助演女優賞、ゴールデン・グローブ賞、NY映画批評家協会賞、LA映画批評家協会賞、全米映画批評家協会賞の最優秀助演女優賞をそれぞれ受賞しています。