滅びゆく大草原 作品情報
ほろびゆくだいそうげん
北アメリカの地図を見ると、ミシシッピ河とロッキー山脈とが、大陸を大きく3つに分けていることが判る。文明がこの土地に来る前、ミシシッピの東側は処女林と起伏する沃野であり、ロッキーの西側は松林と険しい岩山と砂漠が横たわっていた。そして大陸の真中には、樹木のない広漠たる大草原が果てしもなくひろがっていた。大草原を流れる多くの河はこの4辺を緑1色の豊かな牧草地にしていた。この草の海に開拓者たちが幌馬車を乗り入れたのであった。白人が来るまで、ここはインディアンにとって楽土だったが、それも長い大自然の歴史から見ればつい昨日のことで、自然だけがこの大草原を支配していた時代がある。その頃に栄えていた数多くの野性の動物の中で、今日生き残っているのはごく僅かにすぎないが、その僅かな種類を見るだけでも、われわれは遠い昔の姿を知ることができる。春まだ浅い日、大草原の空を、渡り鳥の群がやって来る。カモ、ガン、ツル、カイツブリ、ハクチョウ、雷鳥などである。滅びゆく大草原の象徴はバッファローだが、現在では僅かな群しか見当たらないし、美しい肢体のエダツノカモシカも文明の容赦ない侵入から身を守るため、ロッキーの山に逃げ込んだ。同じ山地に住むピューマは、山の放浪者で行動範囲は驚くほど広い。大草原の愛敬者はプレィリー・ドッグであろう。リスの1種で、地下の集落を作って定住している。彼らの敵、アナフクロウ、ガラガラヘビ、アナグマから、プレィリー・ドッグが身を守る唯一の武器は、誰よりも速い脚である。夏は野牛の結婚の季節、轟く雷鳴に、数百頭の大群は巣さま凄じい足音とほこりを立てて暴走する。稲妻が乾き切った草を打ち、大草原は見る見る紅蓮の焔に包まれるが、大自然は火をつけても必ずそれを消し止める。土砂を流すような雨が降るからである。草木のない斜面にはたちまち小川ができ、大きな川となり、谷には激流があふれ、やがて見渡すかぎりの洪水となる。大草原の西側に横たわる山獄地帯では秋の清涼な空気を衝いて、物淋しい不思議な音が峰から峰へ響きわたる。発情期のオオツノヒツジの牡が大きな角を激突させて闘う奇妙な狂詩曲なのである。そして冬、野牛の列が、降り積もった雪をかき分けて進んでいく。その頃、プレィリー・ドッグは温かい地下の棲家で眠りについているのだ。開拓者やインディアンの大草原は、今では歴史の頁に生きるのみだが、自然の草原ではまだ1部分だけが残っている。人間も漸く自然の意志を理解しはじめ、過去の滅びゆく美しさが未来の美しさとなるように祈りながら、自然の営みに協力しているのである。
「滅びゆく大草原」の解説
ウォルト・ディズニー製作による長編記録映画“自然の冒険”シリーズ第2作で、1955年3月に「砂漠は生きている」に続いて、再びアカデミー賞を獲得した。アメリカ中西部の大草原を背景に、野性動物の生態を紹介している。ベン・ヤープスティーンが共同製作し、ジェームズ・アルガーが監督した。撮影はトム・マックヒュー、ジェームズ・R・サイモンなど11名が協力し、音楽は「海底二万哩」のポール・スミス。日本語版は今福祝。なお公開に当たっては「ディズニー撮影所御案内」と中篇音楽映画「くじらのウィリー」が併映される。
公開日・キャスト、その他基本情報
配給 | 大映洋画部 |
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制作国 | アメリカ(1954) |
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