デリンジャー 作品情報
でりんじゃー
“預金を全部おろしたい”銀行の窓口に立つなり、拳銃を突きつけ札束を奪って車で逃走する。どんな組織とも大物とも組まず、ハリー(ジェフリー・ルイス)チャーリー、ホーマー(ハリー・ディーン・スタントン)、運転手エディ、インディアンの混血娘ビリー(ミシェル・フィリップス)の4人を率いての銀行強盗、これがジョン・デリンジャー(ウォーレン・オーツ)の犯行手口だった。彼らは、1933年の大恐慌の風が吹きすさぶさなかアメリカ中西部を荒しまわっていた。そんなデリンジャー旋風が吹き荒るなか、FBIのフーバー長官の忠実な部下で冷酷非情の捜査官メルビン・パービス(ベン・ジョンソン)は異常なまでの執念を燃やして、大物ギャングたちを皆殺しにすべく追跡を試みていた。しかしこの激烈なギャング皆殺し作戦を尻目に、デリンジャー一家はFBI管轄外地域で矢つぎ早に銀行強盗を働いていた。だが、イースト・シカゴの銀行を襲ったとき、ささいな手違いから警官隊に囲まれエディとチャーリーが銃弾を浴びて死んだ。必死に応戦するデリンジャーは初めて警官を殺し、殺人犯としてアリゾナ州ツーソンの街に逃れねばならなくなった。そのツーソンでも予期せぬアクシデントが待ち受けていた。デリンジャーが愛人のビリーとダンスを楽しんでいたとき、アリゾナ警察のスゴ腕警部ウォラードの急襲をうけ、逮捕されてインディアナ州レイク地方刑務所に叩き込まれる憂き目にあったのだ。だが、デリンジャーは持前の才覚で鮮やかに脱獄、黒人殺人犯リードを従えて、その逃亡の途中街の銀行に押し入って、大金を懐中に軍兵数百人配した厳重な非常線網を見事に突破、一路ビリーの許に車を飛ばした。デリンジャー一家の新しい隠れ家リトル・ボヘミアにはハリー、ホーマー、リード、そして新たに加わった“プリティ・ボーイ”フロイド(スティーヴ・カナリー)と“ベビー・フェイス”ネルソン(リチャード・ドレイファス)の両雄が待ち受けていた。7つの州を股にかけて暴れ回る民衆の敵デリンジャーの悪名は日々高まり、今やFBIパービスの唯一の執念の的になっていた。そのパービスの執念がみのってか、デリンジャー一家はイリノイ州で警官隊に囲まれ激烈な銃撃戦の末、リードが死亡、他の者も殆ど重傷を負って息もたえだえでリトル・ボヘミアの隠れ家に逃げ帰った。さらに、隠れ家でもパービス指揮のもと総動員したFBIとデリンジャー一家の銃弾戦が展開、ハリーは死に、フロイド、ネルソン、ホーマーは車で逃走、逃げ切れたかに見えたが、パービスの敷く広域包囲の前に次々に命を散らしていった。だがデリンジャーは運よく逃亡した。数か月後、ぷっつり断ったデリンジャーの消息を、イリノイ州シカゴで売春宿を経営する中年女アンナ・セージ(C・リーチマン)がパービスに届けでた。それによれば、デリンジャーらしい男が、ローレンスという偽名を使って貿易商になりすまし、しかもインディアン混血の若い売春婦に惚れて通いつめているというのだ。その売春婦はビリー、貿易商ローレンスこそデリンジャーに違いない。パービスはその確信のもと、デリンジャー追跡の最後のツメに挑んだ。1934年6月22日の夜、パービスとFBI局員はシカゴの映画館バイオグラフ劇場を取り囲んだ。パービスの指示通り、デリンジャー、ビリーを連れ立って劇場の外に出てくるアンナ。その瞬間、パービスはデリンジャーの名を呼んで銃を構えた。フイをつかれたデリンジャーは傍らの女を突き飛ばしながら銃を抜こうとしたが、数発の銃弾を浴びて街路に屈した。デリンジャーの死体を囲み人垣が生まれたが、街角の家の壁に飛び散ったデリンジャーの血をハンカチで拭き取っていたビリーを誰一人として気づく者はいなかった。
「デリンジャー」の解説
1933年から34年にかけて、アメリカ中西部一帯を荒しまわり、アメリカ犯罪史上最も有名なギャングとして、五指に数えられる銀行強盗ジョン・デリンジャーの生涯を描く。製作はサミュエル・Z・アーコフ、脚本・監督は「大いなる勇者」「ロイ・ビーン」の脚本を書いた31歳の新人ジョン・ミリアス。撮影はジュールス・ブレンナー、音楽はバリー・デヴォーゾンが各々担当。出演はウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、ミシェル・フィリップス、クロリス・リーチマン・ハリー・ディーン・スタントン、ジョフリー・ルイス、リチャード・ドレイファス、スティーヴ・カナリーなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1974年10月12日 |
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配給 | 現代映画 |
制作国 | アメリカ(1973) |
上映時間 | 107分 |
ユーザーレビュー
総合評価:4点★★★★☆、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-11-09
卑屈で、派手好き、気分屋で無鉄砲、世間の評判を気にするデリンジャーのキャラクター描写が面白い。
彼は、庶民がイメージするデリンジャーらしい行動にこだわり、伝説の人物になろうとするが、その伝説作りの共犯者として、パービスを位置づけているのも興味深い。
この「デリンジャー」が、監督デビュー作となるジョン・ミリアスは、すでに頂点を過ぎて、滅びに向かいつつある、この伝説のスターを、柔らかい西陽の光の中に捉え、詩情をかきたててくれる。