P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-03-07
この映画「断崖」は、夫に殺されるかもしれないという、人妻の心理の襞を、アルフレッド・ヒッチコック監督が、繊細に物語る作品だ。
原作は、英国の推理作家フランシス・アイルズの「犯行以前」。
初めヒッチコック監督は、同じ作者の医師が妻を殺そうと、あの手この手を考える倒叙形式のスリラーの「殺意」を映画化しようと考えていたが、「私が作ってしまうと、あまりに恐ろしいものになってしまいそうだ」と、これを諦め、逆に被害者の視点で犯罪を描く、この作品を手掛けることになったそうだ。
人妻のジョーン・フォンテーンを追い詰める、ケーリー・グラントが、虫も殺せそうもない伊達男ぶりなのが、とてもいい。
妻の元へ運ぶ毒入り(?)ミルクの効果を際立たせようと、豆電球をミルクの中に入れて、暗闇の中にボーッと浮かび上がらせた演出は、ヒッチコック監督ならではの工夫が見られて素晴らしい。