P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-18
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
ジョンフォード監督自身の言葉を借りれば、「家族の一員となることができなかった一匹狼の悲劇」が、ここで鮮やかに浮き彫りにされてくる。
娘は取り戻した。だが、イーサンには、その娘と失われた愛を回復させ、育んでいく場もなければ、また、それができるとも思われない。
愛は不在のまま、孤独な魂を抱えた肉体だけが、そこには存在していて、なんとも切ないのだ。
だが、その切なさが、たまらない魅力となっている異色の西部劇だ。
ジョン・フォード=ジョン・ウェインのコンビ作の中では、最も好きな作品であり、ジョン・フォード監督の最高傑作だと思う。
ジョン・ウェイン自身も語っているように、「イーサンは悪役である。だが、この悪役は滅法、魅力的である。」と。 それは、ジョン・ウェインが演じたためでもあるのだが、単に憎悪に燃えて、執拗なまでにコマンチ族を追うだけの男ではなく、その内に、愛の不在を宿しつつ、荒野を流離うしかなかった孤独な魂、男が本来持ち合わせている、あるいは、それに限りないロマンを感ずるという事を表したものだったからだ。 ジョン・ウェインは、後に「勇気ある追跡」で、アカデミー主演男優賞を受賞しているが、この映画での悪役イーサンの演技の方が、優れているのではないかと、個人的には思っています。 復讐の鬼と化し、数年かけてコマンチを追い、遂に酋長のスカーの死体の頭皮をはぎ、娘を抱きかかえ、「家に帰ろう」というイーサン。 彼は突如として、ヒューマニズムを回復させるが、その連れ帰るべき”家”は、イーサンにはないのだ。
この「捜索者」は、 ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのコンビ作の中での最高傑作だ。 正義感に溢れ、心優しくヒューマンというのが、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインが創り出した西部劇のヒーローのイメージだ。 だが、この映画「捜索者」の主人公イーサンには、それはない。 放浪の旅から帰り、インディアンとの混血青年が、家族に加わっているのを見ると、不快感を現わすし、コマンチ族の妻となった娘を、我が子であっても殺そうとする。 偏見に満ちた、復讐鬼なのだ。