素晴らしき戦争 作品情報
すばらしきせんそう
1914年初頭の欧州。ドイツと同盟したオーストリアと、フランス、ロシアの後楯をもつ小国セルビアとの間は一触即発の状態にあった。そして、オーストリア皇太子暗殺を契機として、同国外相のベルトルート(ジョン・ギールグッド)はフランツ・ヨセフ皇帝(ジャック・ホーキンス)の署名した宣戦布告書を、セルビアにつきつけ、ついでドイツのカイゼル(ケネス・モア)はベルギーに侵入し、イタリアと同盟を結んだ。そこで、グレイ外相(ラルフ・リチャードソン)の外交手腕で、中立を守っていたイギリスも、連合国側として参戦をよぎなくされた。ここに1919年4年7月、第一次大戦の幕はおとされた。志願兵制度だったイギリスは、ヘイグ将軍(ジョン・ミルズ)の指揮のもと徴兵運動が展開された。その熱狂の渦にまかれ、スミス家の若者ハリー(コリン・ファレル)が募兵に応じ、ベルギー戦線に出兵していった。しかし、現実の戦況は、国民の祭り気分とうらはらに連合国側に不利で、英国派遣軍総司令官フレンチ元帥(ローレンス・オリヴィエ)は、積極的態勢をとろうとしなかった。こうした中で、スミス家から2人目の兵隊としてジャック(ポール・シェリー)が、妻フロー(ウェンデル・アルナット)と娘を残し,戦場へ消えて行った。そして、ハリーが負傷して前線から送りかえされてきた。こうした空気は、イギリスの上流社会にも影響し、豪奢ゃな雰囲気はしだいになくなってきたが、この機にひと儲けを企むスティーブン(ダーク・ボガード)のような実業家もいた。一方スミス家では、戦局のエスカレートにともない、フレディ(マルカム・マックフィー)、ジョージ(モーリス・ローヴス)、バーティ(コリン・レッドグレーヴ)、傷の癒えたハリーらが、続々と戦場へかりたてられていった。しかし、戦線の血みどろの戦いをよそに、英国軍上層部では、醜い勢力争いが展開され、最高司令官となったヘイグ将軍は、自らの栄光に目がくらみ、狂ったように突撃命令を下した。このころ、ジョージ軍曹の分隊は、味方の砲弾をうけ、赤いケシの花とともに戦場に散ってしまっていた。ようやく反戦の気運が芽生え始めた国内では、バンクハースト夫人(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)らが、街頭演説をしたり、反戦歌が歌われるようになった。それにもかかわらず、その後も戦場での死傷者はつきることを知らず増大し、スミス家の男たちは、全員戦死してしまった。一面の緑の中、赤いケシの花をつみながら、夫を、父を、息子を失ったスミス家の女たちが歩いている。その周囲には無限の広がりをみせ、無名戦士の白い墓がつづき、どこからともなく男たちの歌声が聞こえ始めるのだった。(パラマウント配給*2 時間15分)
「素晴らしき戦争」の解説
替え歌でつづられた反戦ミュージカル。俳優として知られたリチャード・アッテンボローの監督第1作。製作はブライアン・ダフィーとリチャード・アッテンボロー。コンテニュィティをアン・スキナーが担当。撮影はゲリー・ターピン、音楽監督はアルフレッド・ラルストン、美術はハリー・ホワイト、振付はエレナー・フェイザン、衣裳デザインはアンソニー・メンデルソン、編集はケヴィン・コナーがそれぞれ担当。出演はローレンス・オリヴィエ、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッド、ジョン・ミルズ、ケネス・モア、ジャック・ホーキンス、コリン・レッドグレーヴ、ポール・シェリー、モーリス・ローヴス、コーリン・ファレル、マルカム・マックフィー、ウェンデル・アルナット、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ダーク・ボガードなどの他、多数ゲスト出演。テクニカラー、パナビジョン。1969年作品。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1970年10月24日 |
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配給 | パラマウント |
制作国 | イギリス(1969) |
上映時間 | 145分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
第一次世界大戦を題材にしたこの映画「素晴らしき戦争」は、とにかく、あらゆる面で面白い。
監督は、「ガンジー」「遠い夜明け」の名匠・リチャード・アッテンボローのデビュー作で、CGなしで撮った執念のラストシーンには驚愕してしまいましたね。
もともとが舞台劇なので、いかにもイギリスらしいブラックなユーモアに満ちていて、「モンティ・パイソン」と「ジョン・レノンの僕の戦争」を足して2で割ったような映画なんですね。
この第一次世界大戦の原因のひとつが、当時の"欧州王朝ネットワーク"の機能不全だったことを見せる、オープニングのセンスからしてただ者ではなく、"反戦映画"などという安直な概念を突き抜けた辛辣さがあると思う。
なにしろ凄まじいことに、この映画には無駄なセリフや無駄なシーンはひとつもない。
正確に言うと、ほとんどのセリフに二重三重の意味がかけられているんですね。
そのため、この映画の本当の凄さ、面白さを堪能するためには、史実や欧州の文化というものを、ある程度、知らないと難しいと思う。
因みに、ラスト間際のセリフの11時とは、第一次世界大戦の休戦発効が、1918年11月11日午前11時だったのと、イギリスの劇場ではグランドフィナーレが、午後11時だったのをかけたものなんですね。 また、戦死800万以上、負傷2,100万以上、民間の死者664万人以上というとんでもない犠牲を出した戦争を皮肉る、流行歌や賛美歌の替え歌もシュールにして痛烈で、笑いながら観ているうちに肌が粟立つような感覚に襲われるほどだ。 1914年の最前線クリスマス交歓、ヘイグの徴兵政策、毒ガス戦と砲撃戦、ソンムやイープルの戦い、アメリカの参戦等々を織り込んで戦況と世相の推移を見せるのも、実に素晴らしいと思いますね。