質屋 感想・レビュー 2件

しちや

総合評価5点、「質屋」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-01

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

シドニー・ルメット監督のフィルモ・グラフィにおいても、秀作「十二人の怒れる男」、「セルピコ」、「評決」などと匹敵する、いや、それ以上に”人間を見つめる視点の厳しさ”から言えば、彼の代表作と言っても過言ではないかと思います。

ニューヨーク派の演出家と言われる彼だけに、その下町ロケのリアルな現実感が素晴らしく、また、この映画のクライマックスとも思える、黒人女性が主人公の前に身を投げ出す場面の強烈な印象が、脳裏に焼き付いて離れません。

主人公のソル・ネイザーマンを演じたロッド・スタイガーは、その人間の内面から滲み出すような、魂のこもった渾身の演技で、外観上は冷酷非情極まりない初老の男ですが、実はその内面に、人間の心を持ち続けていたという、恐怖や憤怒や嘆きや絶望の感情を巧みに表現し、このソルという複雑な人間像をあますところなく演じ切って、我々観る者の心をグイグイと引きずり込んで離しません。

「夜の大捜査線」での、南部の田舎町の警察署長を見事に演じて、アカデミー主演男優賞を受賞した彼が、それより3年前に、この映画の演技でベルリン国際映画祭と英国アカデミー賞にて、主演男優賞を受賞していたのも、彼の実力からすれば当然だと納得出来ます。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-01

この映画「質屋」は、若くしてこの世を去った、アメリカの無名の作家エドワード・ルイス・ウォーランドの小説の映画化で、監督が社会派の名匠シドニー・ルメット監督による作品で、ナチスによるユダヤ人迫害の後遺症を描いた、アメリカ映画では最高峰とも言える秀作だと思います。

第二次世界大戦中のポーランド。野原での一家団欒の風景から、この映画は始まります。
昆虫採集に熱中する娘や風に髪の毛をなびかせて、幸福そうな妻に囲まれて満足そうな表情の、ユダヤ人の大学教授のソル・ネイザーマン(名優ロッド・スタイガー)。

ナチスの強制収容所に閉じ込められた彼ら、しかも、妻と娘が無残にも虐殺されてからの数年間を、彼は精神的な廃人として生きて来た、苦悩に満ちた悲惨な過去を持っています。

シドニー・ルメット監督は、絶えず去来するポーランド時代の悲惨な悪夢を、回想形式でフラッシュ・バックの手法で描いていて、”人間の孤独な苦悩”を冷徹で静かに、しかし、厳しい視点で見つめています。

最終更新日:2024-06-11 16:00:02

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