P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-01
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
シドニー・ルメット監督のフィルモ・グラフィにおいても、秀作「十二人の怒れる男」、「セルピコ」、「評決」などと匹敵する、いや、それ以上に”人間を見つめる視点の厳しさ”から言えば、彼の代表作と言っても過言ではないかと思います。
ニューヨーク派の演出家と言われる彼だけに、その下町ロケのリアルな現実感が素晴らしく、また、この映画のクライマックスとも思える、黒人女性が主人公の前に身を投げ出す場面の強烈な印象が、脳裏に焼き付いて離れません。
主人公のソル・ネイザーマンを演じたロッド・スタイガーは、その人間の内面から滲み出すような、魂のこもった渾身の演技で、外観上は冷酷非情極まりない初老の男ですが、実はその内面に、人間の心を持ち続けていたという、恐怖や憤怒や嘆きや絶望の感情を巧みに表現し、このソルという複雑な人間像をあますところなく演じ切って、我々観る者の心をグイグイと引きずり込んで離しません。
「夜の大捜査線」での、南部の田舎町の警察署長を見事に演じて、アカデミー主演男優賞を受賞した彼が、それより3年前に、この映画の演技でベルリン国際映画祭と英国アカデミー賞にて、主演男優賞を受賞していたのも、彼の実力からすれば当然だと納得出来ます。