質屋 作品情報

しちや

ソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)はニューヨークの貧民街で質屋を営んでいる。かつてポーランドで大学教授だったが一家は大戦中ナチの強制収容所に入れられ、言語に絶する苦しみの中で妻子は殺された。今は、妻の妹や、その家族と一緒に何不自由なく暮らしていたが、心はいつも孤独だった。死んだような彼の店に毎朝、生気を吹きこむのは助手のジーザス(ハイメイ・サンチェス)だ。プエルト・リコ生まれの元気な若者で、ゆくゆくは質屋経営をしたいと考えている。ところでソルのスポンサーは自称紳士のロドリゲス。実は彼はスラム街のボスで質屋の店は彼の隠れみのだった。ある日ソルの店に毛色の変わった訪問者があった。マリリンという女性の社会福祉事業家だ。ソルにも仕事に一役買ってもらおうと説得に来たのだが彼は拒絶した。だが彼女には心ひかれた。しかし彼女とかかわり合いになることは世の煩わしさに巻き込まれることだ。彼は恐れた。一方助手のジーザスは街で知り合った3人のチンピラにそそのかされ、自分の勤める店に強盗に入るはめになった。というのは彼自身も金が欲しかったし、尊敬するソルの「世の中、金がすべてだ」という言葉に深い驚きと絶望を感じたからだ。その日は、ロドリゲスから金の届く日だ。一方ジーザスの恋人メイベルは、この計画を知り、ジーザスの身を救うため1人でソルを訪れた。愛する男のために体で金を作ろうとしたのだ。だが目の前に投げ出された彼女の体から、ソルが感じとったのは、かつて妻が、彼の目の前でナチの犯されたいまわしい記憶だった。そして、その夜強盗が行われた。だが、その夜に限ってソルは金庫を開けなかった。しびれをきらした3人組はジーザスの合図を待たずに店に押し入り、ソルを脅迫。彼が拒むと、3人組はピストルを発射した。とっさにジーザスはソルをかばい、彼の身代わりになって死んだ。この事件は、ソルのかたくなな心を溶かした。彼は収容所以来、初めて人間を信頼する気持ちになった。

「質屋」の解説

若くして死んだアメリカの小説家エドワード・ルイス・ウォーラントの、2作目の小説を、デイヴィッド・フリードキンとモートン・ファインが脚色、「グループ」のシドニー・ルメットが監督にあたった。撮影は「グループ」のボリス・コーフマン、音楽は「冷血」のクインシー・ジョーンズが担当した。出演は「夜の大捜査線」のロッド・スタイガー、「ラインの監視」のジェラルディン・フィッツジェラルド、「野良犬の罠」のブロック・ピータース、プエルトルコ生まれの舞台俳優ハイメイ・サンチェスほかニューヨークの舞台人たち。製作はロジャー・ルイスとフィリップ・レインジャー。

公開日・キャスト、その他基本情報

配給 MGM
制作国 アメリカ(1964)

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-01

この映画「質屋」は、若くしてこの世を去った、アメリカの無名の作家エドワード・ルイス・ウォーランドの小説の映画化で、監督が社会派の名匠シドニー・ルメット監督による作品で、ナチスによるユダヤ人迫害の後遺症を描いた、アメリカ映画では最高峰とも言える秀作だと思います。

第二次世界大戦中のポーランド。野原での一家団欒の風景から、この映画は始まります。
昆虫採集に熱中する娘や風に髪の毛をなびかせて、幸福そうな妻に囲まれて満足そうな表情の、ユダヤ人の大学教授のソル・ネイザーマン(名優ロッド・スタイガー)。

ナチスの強制収容所に閉じ込められた彼ら、しかも、妻と娘が無残にも虐殺されてからの数年間を、彼は精神的な廃人として生きて来た、苦悩に満ちた悲惨な過去を持っています。

シドニー・ルメット監督は、絶えず去来するポーランド時代の悲惨な悪夢を、回想形式でフラッシュ・バックの手法で描いていて、”人間の孤独な苦悩”を冷徹で静かに、しかし、厳しい視点で見つめています。

最終更新日:2024-06-11 16:00:02

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