P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2025-05-10
洞口依子のNHKFMシネマサウンズで取り上げられた本篇,サスペンスフルなビル・コンテイの音楽が一際,力強く響き渡って
しょうりへのだっしゅつ
総合評価4.67点、「勝利への脱出」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。
洞口依子のNHKFMシネマサウンズで取り上げられた本篇,サスペンスフルなビル・コンテイの音楽が一際,力強く響き渡って
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
この映画「勝利への脱出」は、ジョン・ヒューストン監督による"脱走アクション映画"の傑作ですね。
舞台は第二次世界大戦下の連合軍捕虜収容所。と言えば、かつてのダイナミックな脱走ドラマの大傑作「大脱走」を思い出してしまうが、この映画はちょっと違うのだ。
何とサッカーの試合の最中に、脱走しようというアイディアなのである。
1943年、ナチス占領下のパリ。連合軍捕虜収容所で、サッカーの元全英選抜選手とドイツの選手が出会った事から、ドイツ軍VS捕虜選抜チームのサッカー・ゲームが企画される。
そして、レジスタンスはこれを利用して捕虜たちの集団脱走を企てるが-----------。
この映画の中心人物は三人。マイケル・ケインのイギリス将校。冷たいばかりの完璧な計算で脱走計画を推し進め、時には仲間の腕を叩き折る事さえやってのける。
スウェーデン出身の名優・マックス・フォン・シドーが扮しているのはドイツ将校。
スポーツマンとしての純粋な気持ちと共に、ドイツ捕虜収容所政策を、対外的に明るくイメージ・アップしようと考えて、サッカー試合を実現させる。
そして、もう一人は、陽気でおっちょこちょいのアメリカ将校のシルヴェスター・スタローン。 この計画に参加したいのだが、なかなか仲間に加えてもらえない。このスタローンが実にいい。 アメリカ青年らしい爽やかさと一途な正義感を素朴に演じていて好感が持てる。 「ロッキー」のイメージそのままに、典型的な"愛すべき"アメリカの青年像を体現している。 スタローンのおかげでラストのサッカー試合がぐんと盛り上がる。 試合途中の脱走計画をやめて、最後の試合を勝ち抜こうとするわけだが、ラストの描写が何とも甘いという欠点も、途中の中だるみも、このサッカー場面の迫力が、充分にカバーしていると思う。 ブラジルのサッカーの神様ペレを初め、本物のサッカーのスター選手が捕虜の兵士として試合に加わっているのも見ものだ。
かつての「大脱走」のクライマックスが、個々の力による脱走であったのに対して、この映画では"集団プレー"。 今、この時を共に戦い抜こうという、アメリカ人向けのメッセージが聞こえてきそうだ。
本マイケル・ケインがヒギンズ原作の独逸軍の中佐の主人公を演じた作品がジョン・スタージェス監督の遺作と為った、第二次大戦中のポーランドを舞台にした劇映画「鷲は舞い降りた」だった…。其れは本編同様、サスペンスフルなストーリー展開で恰かも、アルフレッド・ヒッチコック監督のスパイ映画を彷彿とさせる様なスリリングな面持ちが在ったんだ…。