殺しのドレス 作品情報
ころしのどれす
マンハッタンにあるアパートの一室。シャワーを浴びている中年女性ケイト(アンジー・ディッキンソン)は、その後、夫のマイク(フレッド・ウェバー)の腕の中で歓びの声をあげた。しかし、マイクがベッドから出ていった後の表情は決して満足したものではなかった。ケイトは時々突然たくましい男に襲われる夢を見ていた。そして精神分析医のエリオット(マイケル・ケイン)のクリニックにかよっていた。彼女にはピーター(キース・ゴードン)という息子がいたが、彼はコンピューターに狂っており、今も科学コンクールに出品するためにその組立てに余念がなかった。翌日、1人で街に出たケイトは、白いコートに白いハンドバッグ、白い手袋という出で立ちでまずエリオットを訪ねた。紳士的な彼は、ケイトの夫のセックスへの不満を聞いてやり、程よい助言を与えた。それからケイトはメトロポリタン美術館へと向かった。医者の助言も彼女には効用はないとみえ、いらいらした気持ちはそのまま美術館の内部までもちこまれた。その中で彼女は1人の男の視点を感じた。男は挑発的にケイトを誘う。彼女は誘われるままにその男とタクシーの中で情事を交わし男のアパートヘ行った。その男の机の中の書類から、男が性病であることを知り急いでその部屋を出たケイトは、途中指輪を忘れて来たことに気づきエレベーターで戻った。が、扉が開いた瞬間、彼女は何者かに襲われナイフで惨殺された。ちょうどエレベーターを待っていた若い女性リズ(ナンシー・アレン)は、死体を発見、犯人らしいブロンドの女性を目撃した。刑事マリノ(デニス・フランツ)の取り調べを受けるリズ。娼婦であるリズにマリノは冷たい。一方、犯人はリズを狙いはじめていた。地下鉄の中で間一髪、犯人に殺されるところをケイトの息子ピーターに助けられるリズ。犯人は性的倒錯者だっためだ。女の心を持った男…。自分の中の男を刺激する対称、つまりケイトのようなセクシーな女は彼の中の女の部分が邪魔とする存在だったのだ。その犯人とは何と精神分析医のエリオットだった。証拠を掴むためにエリオットを挑発するリズ。彼が再び殺人を犯そうとした寸前、かけつけたマリノ刑事がリズを救いエリオットを捕えるのだった。
「殺しのドレス」の解説
ニューヨークを舞台にあるセクシーな中年の人妻が殺された事件をめぐって展開する心理劇的サスペンス映画。製作はジョージ・リットー、監督・脚本は「フューリー」のブライアン・デ・パルマ、撮影はラルフ・ボード、音楽はピノ・ドナジオ、編集はジェリー・グリーンバーグ、衣裳はアン・ロスが各々担当。出演はマイケル・ケイン、アンジー・ディッキンソン、ナンシー・アレン、キース・ゴードン、デニス・フランツ、デイヴィッド・マーグリース、フレッド・ウェバーなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1981年4月18日 |
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配給 | 日本ヘラルド |
制作国 | アメリカ(1980) |
上映時間 | 105分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
正から負へのボルテージの反転という彼のこの手法は、「キャリー」のハイライト・シーンで延々たるスローモーションの後に、主人公を幸福の絶頂から奈落の底へと突き落とした瞬間に開花していたと思う。
「殺しのドレス」では、アンジー・ディッキンソンが情事の後の心地よい疲労感に酔いながら、健康診断書の一文を盗み見る一瞬に集約されている。
その一瞬を境に、物語は加速度的に不吉な雰囲気を増し、エレベーター内でのカタストロフへとなだれ落ちていく。
この作品を支配する二面性—現実と悪夢、都会的に洗練されたタッチとプリミティブな血のイメージ、エロティックな官能美と剃刀の刃が代表する金属質のクールさ、鏡に象徴される性倒錯者の実像と虚像—は、このように相対する”陰”と”陽”の接点を、鮮やかに描き分けるブライアン・デ・パルマ監督の独自の手法によって、銀幕上で融合するのだ。