P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
この映画「ガントレット」でのクリント・イーストウッドの役は、フェニックス市警察のベン・ショックレーという、勤務中もジャック・ダニエルズの小瓶を、ポケットに入れているような、うだつのあがらない刑事だ。
このベンが、新任の市警長官の命令で、ラスベガス警察に留置されている売春婦を、あるギャングの裁判の証人にするために、引き取りに行くことになる。
ところが、女はひどく脅えているし、ラスベガスの競馬ののみ屋は、この売春婦マリーを馬に見立てて、フェニックスに無事に行かれるか、行かれないかの賭けをしている。
しかも、行かれないという方が圧倒的で、事実、警察から空港へ行くまでに、もうベンとマリーは襲われてしまう。
そこで飛行機を断念して、マリーの家に避難して、フェニックスの長官に応援を頼むと、駆けつけたラスベガス警察の警官隊は、なぜかベンを凶悪犯扱いし、家に向かって一斉射撃を始めるのだ。
しかし、話の底は、まもなく割れる。
マリーに証言されると、ギャングと手を握っていることがわかってしまう長官が、いてもいなくても同じベンを犠牲にして、マリーを消そうとしているのだった。 パトロール・カーを乗っ取ったり、ヒッピーのオートバイを奪ったりして、ベンはなんとかマリーを連れて行こうとする。 この映画の中間部は、敵味方の攻防に論理性が欠けているので、いささかダレてしまう。 そして、長官が黒幕だと気づいたベンは、道順を報告した上で、長距離バスを乗っ取って、裁判所に直行しようとする。 順路を知らせておけば、市内を通行止めにして、襲撃してくるに違いないから、一般人を巻き込まずにすむという配慮なのだ。 案の定、裁判所への道の両側は、警官隊で埋まっていて、もう凄まじい乱射乱撃雨あられ、ということになってしまう。 「エクソシスト2」のチャック・ギャスパーが特殊効果を担当したこの大乱射場面は、一見の価値があると思う。
この映画の題名の「ガントレット」というのは、鞭を持った執行人が大勢、左右に並ぶ間を、罪人が歩いて行って、最後まで倒れなければ赦される、という中世の刑罰のことで、つまり、この映画のクライマックスのことなのだ。 いくら長官の命令でも、凶悪犯にされたベンはともかく、証人まで殺してしまう大銃撃を、警官たちが実行するかなとか、人道主義の新聞記者や野党の市会議員はいないのだろうか、といった疑問も頭をかすめるけれども、バスが蜂の巣のように穴だらけになるところは、とにかく凄い。 もちろん、それでもイーストウッドだから、ベンは生き延びて、長官の偽善の仮面を剥いで、ハイ、お終いと成るわけだ。 卑猥な言葉で毒づきながら、マリーがだんだんとベンに魅かれていくのは、定石通りだけれど、ソンドラ・ロックが、なかなかいい味を出していたと思う。