P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-11-07
「ガス燈」は、殺人事件をめぐるミステリー映画だが、ヒロインのポーラは、イングリッド・バーグマンが常々やりたいと思っていた役だそうだ。
そのためなら、競演のシャルル・ボワイエにタイトル・クレジットのトップを譲ってもいいとまで、考えていたとのことで、それぐらい、この役に執念を燃やしていたんですね。
ポーラは、純粋かつ傷つきやすい性格で、夫役のボワイエの偏執的な陰謀のために、発狂の恐怖に怯えるのだ。
なるほど、女優にしてみれば、こうした複雑な役は、すこぶる魅力的なのだろう。
バーグマンにとっては、新しい役柄へのチャレンジであったのだと思う。
殺された叔母の家で、新婚の居を構えるポーラの、いささかの不安、夫への従属物でしかない、妻の虚しさと怯えなど、大柄なバーグマンの肉体からは、エモーションの大波小波が間段なく伝わってくる。
偽りの結婚と見せかけの幸福-----その仮面の裏の真実を知らないポーラ役のバーグマンは、うっとりするくらいに美しい。