カラーパープル(1985) 感想・レビュー 1件

からーぱーぷる

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P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-17

この映画「カラーパープル」は、黒人女流作家アリス・ウォーカーのピュリッツァー賞を受賞した原作に忠実に、黒人女性セリーの40年にわたる”苛酷な生”を、美しい映像の中に描き出した、スティーヴン・スピルバーグ監督の名作です。

この映画の公開当時のスピルバーグ監督は、「ジョーズ」や「E・T」等の作品でエンターテインメント系作品のヒットメーカーでしたので、意外な感じで受け止められていました。

確かに彼の作品は、映画の楽しさに満ちていますが、現代文明に対する”鋭い風刺”があることを忘れてはいけないと思います。
それは理不尽な暴力や抑圧への嫌悪、戦いであり、この現実とは違った別の世界への夢想であり、人間の救済です。

この映画は、ある黒人姉妹の強い絆と不滅の愛で彩られた40年の歴史を、一大叙事詩として描きながら、人間が自分自身に目覚める、精神的な成長の道程を深く追求した、いつまでも心の奥に残り続ける作品です。

この映画での主人公セリーをみまうのも、理不尽な暴力です。 “父”の子を二人も産み、暴君としかいいようのない男と結婚させられ、召使のごとき人生を送るセリーに苦難をもたらすのは、白人による差別ではなく、横暴な黒人男性です。 苦しみの中から人間として目覚めていくセリー。 そして、セリーを初めとする黒人女性たちは男たちに反逆し、自立を獲得するのです。 この物語を、”白人で男”のスピルバーグ監督が作ったのです。 そこに浮かび上がるのは、人種とか性の違いを超越しうる人間の苦しみに対する、繊細な感受性であり、怒りであり、人間の善意への信頼なのです。 そして、その精神は、原作と映画の両方に通底しているのです。 もちろん、黒人の苦しみの底にある、白人による差別も告発されています。 特に、猛烈な女性ソフィアの、白人の市長をなぐって10年近い監獄暮らしになるというエピソードは鮮烈で、彼女をメイドにする市長夫人の偽善者ぶりも痛烈に批判されています。

最終更新日:2024-05-27 16:00:01

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