P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
この映画「アンネの日記」は、世界的なベストセラーとなった、アンネ・フランクによる同名の原作の映画化作品で、人間の善意を信じて疑わなかったアンネの短い青春を描いています。
この多感な少女アンネを主人公としたホームドラマ、そして青春ドラマとしてもみられる映画の背後には、あのアウシュヴィッツの無惨な映像が、そっと息をひそめています。
映画は二年余の隠れ家生活の末、遂にゲシュタポによって、アンネたちが捕らえられるところで終わるのですが、アンネ一家、ファン・ダーン一家、デュセルさんたちの姿にオーバーラップして大空が映り、次第に彼らの姿が消えて行き、大空には鳥たちが舞い、そして アンネの日記の一筋のナレーションが重なります。
「私はやっぱり信じています。こんな世の中だけど——人の心は本来は善だと」。 二年間、狭い室内の中に隠れて暮らさねばならなかった八人にとって、それはなんと皮肉な映像であったことでしょう。 このまさに希望と絶望が溶けあったラストは、そのまま「 アンネの日記」の感動の深さを語らずにはおきません。 そう、「 アンネの日記」は、人間への希望、生きることの喜びを謳いあげてやみません。 まるでそれは、絶望と悪意の濁流に浮かんだ小さなイカダです。 だが、その少女の息吹きを通して、生きることへの愛おしさが切々と伝わってくるのであり、それはなぜ、人間は絶望や悪意に打ち負かされてはいけないかを語るのです。