P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-10
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
「アルカトラズからの脱出」を監督したドン・シーゲルは、この映画を撮る25年前に、実際にアルカトラズ刑務所を取材したそうだ。
もちろん、この映画のためではない。その頃、彼は「第十一号監房の暴動」という映画を撮っていたからだ。
サンクエンティンやフォルサムといった悪名高い刑務所も同じ時期に訪れ、なんとも憂鬱な気分にさせられたらしい。
この「アルカトラズからの脱出」は、1960年に起こった実際の事件を下敷きにしている。
当時、この島からの脱出は不可能とされていた。
警備が厳しく、海流が速く、水温が低いという三条件が揃っていたからだ。
その刑務所に、クリント・イーストウッド扮するフランク・モリスという犯罪者が移送されてくる。
ドン・シーゲル監督は例によって、彼の素性や背後関係を明かさない。
モリスが脱獄の名人であり、それだからこそ、この島へ送られてきたという事実にのみ照明を当てる。
あとは刑務所内部の描写だ。果たして、どんな囚人がいるのか? パトリック・マクグーハン扮する所長は、どんな性格なのか? 刑務所はどうやって囚人の人格を破壊するのか? 道具の調達はどうやって行なうのか? ドン・シーゲル監督は、実に無駄なく、こうした細部を語っていく。 その語りに従えば、観ている私はモリスの内部に導かれるのだ。 と言うより、モリスとともに脱獄のプランを真剣に練り始めるのだ。 誰を味方につけるか。時期はいつを選ぶか。監視の目はどう欺くか。 相棒選びだけは、やや説得力を欠くが、他は文句なしに渋い。 ドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドの名コンビは、この作品が最後となったが、隠れた佳作だと思いますね。