日時:11月8日(日)
場所:TOHOシネマズ六本木ヒルズ 7番SC
登壇者: 竹中直人監督、山田孝之監督、齊藤工監督、松井玲奈、森優作、松田龍平、大橋裕之(原作)、倉持裕(脚本)、鈴木寿明(蒲郡市長)
ミニシアターの公開ながら4万人動員の異例の大ヒットを産んだ『音楽』の作者であり、その独特な表現力が唯一無二の作家と称される天才漫画家大橋裕之の幻の初期作集「ゾッキA」「ゾッキB」を原作に、日本を代表する俳優であり、クリエイターとしても異能示す竹中直人・山田孝之・齊藤工の三人が映画監督として共同制作をした、奇跡の実写映画化である『ゾッキ』が、2021年春に全国公開となる。
映画監督として、8作目となるベテランの竹中、3作目の齊藤、映画作品初監督となる山田。キャリアの異なる3人ですが、共通して俳優として第一線で作品至上主義を徹底してきた。その上で枠にとらわれず、映画監督、プロデューサー、クリエイターとしても表現している3人が一丸となり、『ゾッキ』が生まれた原点である、大橋氏の生まれ故郷・愛知県蒲郡市でロケを敢行し、多彩なキャスト・音楽など、それぞれのこだわりや人脈を集結させて制作!大橋裕之氏の初期短編集「ゾッキA」「ゾッキB」は、およそ30編の傑作短編作品が収録されており、本作はその中から多数エピソードを織り交ぜて構成し、脚本を舞台演出家・劇作家の倉持裕が書き上げた、ありふれた日常に巻き起こる、不思議な笑い包まれた、なんだかわからないけど、きっとあなたの明日を楽しくする、唯一無二のヒューマンコメディだ。
この度、本作が第33回東京国際映画祭 「TOKYOプレミア2020」部門のワールド・プレミア作品として上映され、竹中直人監督、山田孝之監督、齊藤工監督、出演者の松井玲奈、森優作、松田龍平、原作者・大橋裕之、脚本家・倉持裕、鈴木寿明蒲郡市長が舞台挨拶を実施!初めて明かされる撮影現場でのエピソードやキャスティング秘話など盛りだくさんのトークに加え、来場者とのQ&Aも実施された!
舞台上に登場した登壇者たちは、全員がおそろいのゾッキパーカーを着用。齊藤監督は上下で2枚着用するというハイセンスな着こなしも披露し、“寄せ集め”の全員がチームワークの良さをアピール。竹中監督のパートに出演している松井は「役名としては幽霊という役でマネキンを演じました。特殊メイクも初体験でとても楽しい経験でした」と独特過ぎる役に笑顔で「今まで色々なオバケを演じてきましたが、スキンヘッドで白塗りなのは初体験。人生何事も経験だと思って楽しみました」と新境地開拓の喜びを口にしていた。
竹中の印象については「特殊メイクの準備中もそばにいてくれて、とても心配していただきケアもしていただきました」と感謝しながらその人柄について言及。その竹中はキャスティングについて「直感」といい「松井さんには美しくも不思議な匂いがする。その空気は松井さんにしか出せないだろうと思った」と松井さんだからこその起用理由を明かした。
齊藤監督パートに出演している森は「丁寧に最後まで現場に寄り添いながらモノ作りをされる方。僕はそこで自分の出来ることをやりました」と斎藤の監督としてのスタンスを紹介。それに対し斎藤は「森さん自身が大橋先生イズムを持っている方。森さんがカメラの前に立つと『ゾッキ』の世界が成立する。そんな稀有な役者さんに演じてもらえて、それだけで勝ったと思った」と全幅の信頼を寄せていることを明かしている。また3人での共同制作スタイルに「とても貴重な経験。竹中さんと重なってディレクションするシーンもあったけれど、向かっている方向がみんな同じだったのでとてもスムーズでした」と全員が一丸となった撮影を回想した。
山田監督のパートに出演した松田は「楽しかった」とボソッとつぶやくと、山田監督は「本当に?」といぶかしがるも「龍平君には感情が出ないので、だからこそこの役は龍平君がいいと思った」と起用に自信を覗かせ、松田は「山田君は現場でニヤニヤしているので、その顔を見るだけで楽しかった。僕に対しての演出はニヤニヤしてるだけ。ほかの周りの役者さんには熱い想いをぶつけていたのに。そういうやり方なんだぁと思った」と山田の演出スタイルを明かすと、当の山田は「自分の長編映画でモニターに龍平君が映っている。それだけで嬉しくて。ずっと見ていたいとニヤニヤしていました。でもほかの役者の方は龍平君ほどではないので、厳しめにやりました」と冗談めかして会場を笑わせた。
3人の中で監督初挑戦の山田は「僕が初監督ということで、ほかの役者さんはナメてくると思ったので、まずはマウントを取るために恐怖で潰してやろうと思った。現場では『お前らやれよな!』と。それしか言っていません(笑)」とさらにジョークを重ねるも、“国際映画祭”ゆえに英語通訳が入ると、斎藤から「今の冷静に訳されるんですね」と指摘され、山田は「これは恥ずかしいやつだね…」と苦笑い。場内も笑いに包まれた。
複数の独立した短編を1本の長編に構成した脚本家の倉持は「独立した作品を繋げる作業は難しかったけれど、あるエピソードのセリフが別の作品のテーマになったりして、スリリングな体験でした」と手応えを感じている様子。原作者の大橋は「脚本を読んだときに、あのエピソードがこういう繋がりで描かれているのかと驚きがありました。繋がった映像を見たときも驚きがありました。自分の原作ということで今現在でも冷静に観ることができませんが、とても好きな作品に仕上がっています」と太鼓判を押していた。
ロケ地となった愛知県・蒲郡市の鈴木市長が登場すると、「お弁当や炊き出しを手伝いましたが、そんな時間も幸せでした。作品に携わるみんなが幸せを感じて笑顔になれた時間です。ウィズ・コロナの時代ですが、『ゾッキ』の不思議な笑いを通して日本に元気を届けてほしい!」と全国公開に向けてエールを送っていた。
途中、来場者とのQ&Aも行われると、来場者から「キャスティングはどのように決められたのか?現場では3人でどう演出をしていったのか」という制作秘話について鋭い質問が。竹中監督は「キャスティングは直感です。ふっと頭によぎった人にお願いしています。現場では3人がそれぞれのパートを担当していました。倉持さんの脚本がしっかり仕上がっているのですべてがうまくいきました」と現場でのエピソードを披露。山田監督も「僕も直感ですね。何度も原作を読んで、顔が浮かんだ人や学生役のオーディションでは声や話し方をみてこの人!というイメージでした。」とキャスティング秘話を振り返っていた。一方で齊藤監督は「慎重にキャスティングせねば…という思いがありました。その中でたまたま別の現場で出会ったコウテイの九条さんはまさに!と。森さんとの化学反応が怖くもあったけど、それがゾッキの世界感な気もして」と運命的な出会いを明かすと、原作者の大橋さんも「九条さんはまさに漫画のまんまです」と口にしていた。
2018年に原作に出会った竹中監督は、最後に「初めて原作を読んだときには、あまりの面白さに震える思いでした。どこか切なく、懐かしく、デタラメで狂っている。出会いから2年後にこうやって映画という形になったのは本当に嬉しい。本気で夢を持っていれば、叶うんですね。夢はもち続けた方がいい。そう深く感じ入りました」と映画完成に万感の思いを明かし、舞台挨拶は幕を閉じた。