「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した佐木隆三氏の小説「身分帳」を原案とした西川美和監督最新作『すばらしき世界』が 2021 年春全国公開されることが決定した。これまで一貫してオリジナルにこだわり続けた西川美和監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約 35 年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ。
主演には、国内外でその演技力を高く評価され続ける名優・役所広司。人生の大半を刑務所で過ごし、社会から“置いてけぼり”を食らいながらも、まっすぐ過ぎるその性格と、そのどこか憎めない魅力で周囲の人々とつながっていく三上役を情感豊かに演じた。
三上が自らテレビ局へ送った、刑務所内の個人台帳である「身分帳」を手にするテレビディレクターを仲野太賀、三上が更生してゆく様子をテレビ番組にしようと、獲物を狙うように近づくテレビプロデューサーに長澤まさみ、ほか、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャストたちが西川監督のもとに集結した。
人間の本質をあぶり出す作品を次々と発表し、高評価を得てきた西川監督が、学生時代から憧れ続けた役所広司。役所も「いつか西川監督とご一緒したいと思っていた」と語り、相思相愛の二人が世に送り出すのはどのような 『すばらしき世界』なのか?そして、国内だけでなく世界からの支持も厚い役所広司と西川美和監督のタッグで手掛ける本作は、世界国際映画祭からの注目度も高く、今後の動向に注目したい。
役所広司 コメント
いつか西川監督作品に参加したいと思っていました。三上という得体のしれない男の役を頂きました。面白さと難しさを感じました。今日撮影したシーンを明日撮るシーンの手掛かりにしながら、最後までこの男はどんな人間なんだろう?と自分に問いかけていました。人生のほとんどを刑務所の中で過ごした男が出所してから見た私たちの世界は、本当にすばらしい世界なんだろうか?タイトルの『すばらしき世界』をお客様がどのように感じるのか?楽しみです。
西川美和 コメント
「身分帳」は約 30 年前の小説ですが、これほど「人間と世間」を面白く描いた物語が埋もれていたとは、と映画化を決意しました。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた主人公に役所広司さんを迎え、その男のやり直しの日々を現代に置き換えました。生々しくも温かい物語性と、役所さんの凄まじい人間的魅力に引っ張られ、濃密な人間ドラマが仕上がったと思います。新型ウィルスの影響で、自由に歩き回ること、仕事を持つこと、人と触れ合いながら生きて行くこと、それらがどれほど得難いものだったかを実感する中で、ごく普通の人生を取り戻すことに四苦八苦する主人公が重なります。世界中の映画作品が息の根を止められつつある中で、完成にこぎつけられた幸運に感謝しつつ、この作品を一人でも多くの方に届ける方法を考え、「映画を観る」ことの豊かさを伝えていければと思っています。