日時:2019年11月23日(土)
場所:新宿K’s cinema
登壇者:宇野愛海、落合モトキ、堀春菜、細川岳、山中聡、佐藤快磨監督
初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』が、ぴあフィルムフェスティバルで2冠を受賞し、アジア最大の映画祭である釜山国際映画祭に正式出品された佐藤快磨(たくま)監督(30)が、本年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞を受賞した、回復期リハビリテーション病院の新人理学療法士と彼女を取り巻く人々を描く新作『歩けない僕らは』が11月23日より公開され、初日舞台挨拶を行った。佐藤監督の他、岩井俊二プロデュースの連続ドラマ「なぞの転校生」、 映画『罪の余白』ほかで女優として活躍中の宇野愛海(なるみ)、「おっさんずラブ(2016)」など人気作に出演が続く落合モトキ、佐藤監督の『ガンバレとかうるせぇ』で初めてカメラの前に立って主演デビューを飾り、『空(カラ)の味』主演で第10回田辺・弁慶映画祭 女優賞を受賞した堀春菜、併映作品である同じく佐藤快磨監督の『ガンバレとかうるせぇ』主演の細川岳、『運命じゃない人』の他、バイプレイヤーとして映画・ドラマなどで活躍する山中聡(そう)が登壇した。
新人理学療法士の遥役の宇野は、脳卒中を発症して半身不随となった患者役の落合モトキと、撮影時は挨拶しかしなくて何も話さなかったそう。「何かあったんですか?」と聞かれた宇野は、「本物の理学療法士さんに、患者さんとの距離感が大切だというお話を聞いて、普段から近すぎたらいけないなと思って、あまり話をせずにいました」と話し、「嫌われているんじゃないかなと思いませんでしたか?」と聞かれた落合は、「思ってました」と冗談を言い、「2人で決めたわけではないけれど、そんな感じの雰囲気があって、話しかけられたら話しかけていこうかなと思っていたんですけれど、そこで馴れ合いがあっても、この映画にとってプラスにはならないのかなと思っていたので、受け入れました」と真相を話した。
宇野は、ポスターにもなっている、宇野と落合が対峙するシーンの撮影について、「後ろで本物の患者さんたちが見学している中で、ぶつかるじゃないですけれど、結構思い切ったことを言うシーンだったので、すごく緊張感がありました」と述懐した。
落合は、身内の方に同じ症状の方がいて、この映画がきっかけに向き合い方が変わったとのこと。「以前は、見て見ぬ振りではないですけれど、そんな感じがあったんですけれど、この作品を通して、面と向かってっていうところには行きました。いざそうなってみると、1から10までやってあげたくなってしまうようなところがあって。でもそれって、その人のためにはなっていないので、1周回って、その人のためになることってなんだろうなと考えるようになっています」と告白した。
理学療法士の課長役の山中が「映画の初日にお客さんに来てもらうというのは、映画にとってすごく大事なことなんです。今日土曜日で、東京中に色んな舞台挨拶がある中で、ここに来ていただいていて、皆ありがたいと思っています。お客さんに拍手!」と言って、皆で拍手をする場面も。山中は、ロケ地となった栃木の「リハビリテーション花の舎(いえ)病院」で働いている課長役のモデルとなった理学療法士さんと撮影前に話したことに関して、「(役者は)その人が持っている内側を表現するのが仕事。参考にさせていただきました」と話した。
編集時に、脚本からラストシーンが変わり、意外なシーンがラストシーンになったが、山中は、「お客さんはまだ見ていないので、ネタバレになっちゃうかもしれないですけれど、ラスト、落合くんがゾンビになって病院をぶち壊します」とジョークを飛ばし、ラストに関しては、「皆さんに見ていただいて、感じていただければ」と話した。
堀と細川がW主演した映画『ガンバレとかうるせぇ』も、2014年にぴあフィルムフェスティバルで2冠を受賞してから初めて、本日から併映作品として劇場で公開されました。佐藤監督は、新作『歩けない僕らは』に加え、『ガンバレとかうるせぇ』も本日が公開初日となった想いを聞かれ、「『歩けない僕らは』は2年前の12月に撮影し、『ガンバレとかうるせぇ』にいたっては、6年前に撮影した作品なので、上映していただくことが当たり前ではなくて、特別なことだなと思います。『ガンバレとかうるせぇ』は、オンラインなどの配信のお話もいただいたんですけれど、自分としては公開という形で皆さんに見ていただきたかったので、こうやって劇場で公開できて嬉しいです」と話した。
堀は、自身が初めてカメラの前に立ったという『ガンバレとかうるせぇ』で笑顔が一度もない理由について、「最初の方のシーンで私とキャプテンが会話をするシーンがあって、そのシーンが監督的には一番楽しいシーンだったんですけれど、私がそのシーンで1回も笑わなかったので、監督が『じゃあこの映画では笑顔封印だね』という感じで、だんだんブスッとしたマネージャーに仕上がっていった感じです」とエピソードを披露。監督は、「どんどん堀さんが菜津というマネージャーになっていきました」と撮影当時を振り返った。
堀は『ガンバレとかうるせぇ』では、サッカー部を辞める部員を引き止める役だったが、『歩けない僕らは』では、理学療法士を社会人になって早々に辞める役。「『ガンバレとかうるせぇ』は、考える余裕もなく突っ走った感じで、『歩けない僕らは』は、宇野さんにどんな風に影響を与えるべき役なのかなと考えて取り組みました」と話した。
『ガンバレとかうるせぇ』と『歩けない僕らは』とで堀と細川の髪型やキャラクターが全然違うので、続けて上映しても、同じ人だと気づかれないそう。『ガンバレとかうるせぇ』の寡黙で全てを1人で背負ってしまうサッカー部のキャプテンと、『歩けない僕らは』の少しチャラく見えるロン毛の主人公の彼氏役と、どちらがご自身に近いか聞かれた細川は、「周りが見えなくなってしまうので、『ガンバレとかうるせぇ』の方が近いかもしれないです」と話し、演じやすかったのはどっちか聞かれると、「チャラロン毛」と即答し、会場を笑わせた。
宇野は、カメラ前以外での彼氏役の細川との時間が、役作りにすごく役立ったとのことで、細川は、「2人のシーンは少ないんですけれど、時間を埋める作業はいつも大事にしたいと思っていて、彼氏という役なので、一緒にバッティングセンターに行ったり散歩してしゃべったりしました」と話した。宇野は、「遥にとって彼氏である翔くんの存在は大きかったので、一緒に過ごせる時間を作っていただいて、助かりました」と感謝を伝えた。
最後に、監督が、「『ガンバレとかうるせぇ』は僕の初期のターニングポイントとなった作品で、『歩けない僕らは』は今の全力を込めた最新作となっていて、この2本を選んで見に来てくださって、本当にありがとうございます。今日の日を皆さんと迎えることができて嬉しいです。(今年急逝した患者・タエ役の)佐々木すみ江さんもいらっしゃれたら嬉しかったんですけれど、今日の日を喜んでくださっていると思います。楽しんでくださったら本当に嬉しいです」と感無量の様子で語り、初日舞台挨拶は終了した。