当代一の人気噺家、柳家喬太郎とE-girlsの石井杏奈が親子役で共演した話題作『スプリング、ハズ、カム』が2月18日より新宿武蔵野館にて公開となる。広島から上京する娘のために親子で家探しをする一日を描いた本作は、娘を知る、父を知るための可笑しく切ないご町内ロードムービー。第28回東京国際映画祭では日本映画スプラッシュ部門出品作品として上映された。
本作にはクラウドファンディングによってその製作資金の一部が集められたという特徴がある。近年クラウドファンディングで製作された作品が多くなっており、投資家の観たいという気持ちが映画を完成へ導くという新しい映画作りのありかたとして注目されている。本作もまたそんな温かい声に支えられ、目標金額を大きく上回る結果となった。
<クラウドファンディングとは?>
クリエイターや起業家が企画開発の実現のために、インターネットを通じて不特定多数の人から資金の出資や協力を募ることである。近年映画業界でも製作費や海外用宣伝費などを募る手段として利用されており、出資者には試写会や限定資料といった特典がついている。最近では大ヒットしている『この世界の片隅に』もクラウドファンディングによって製作資金が集められたことで話題となっており、新しい映画の資金調達手段として今後ますます活用が見込まれている。
本作の企画は、監督の吉野竜平がたまたま聴いたラジオ番組で柳家喬太郎の存在を知ったことろから始まる。その話芸のおもしろさに聞き惚れた監督は、そのキャラクターを自身の映像世界に投入してみたいと思い、喬太郎へのアテ書きで本作の脚本を書き上げた。さらに、監督は映画の舞台として「下町情緒があるれる町」=祖師谷大蔵を選んだが、この町は実は喬太郎の出身地でもあったのだ。こうして動き出した企画だが、大きな課題として製作資金の調達があった。落語界ではその名を知らぬものなどいない喬太郎であるが、映画の世界となると話は別でまだまだ無名といえる。そんな喬太郎と下町が舞台の作品に出資するスポンサーなどいるのか?その活路を切り開いたものこそクラウドファンディングであった。
国内最大級のクラウドファンディング「MotionGallery(モーションギャラリー)」内で資金を募ることが決定し、300万円を目標に告知動画をネットで配信、舞台の祖師ヶ谷大蔵でチラシを配布するなど地道な宣伝活動が行われた。喬太郎自身も演芸場へのチラシの設置交渉や自身のラジオ番組での告知など積極的に宣伝活動を行った。そのうち、支援者の中からも「地元でチラシをまくから送ってほしい」などの声があがるようになり、運営スタッフだけではまわりきれない地方にまで宣伝活動が広がっていった。その結果、全国213人の方々のご支援により、目標の300万円を大きく上回る450万弱が集まった。これは、「MotionGallery(モーションギャラリー)」の10年の歴史の中で映画カテゴリー歴代7位となる異例の集金額であった。まさに全国各地でこの作品を「観たい!」と思った方々の力によって映画『スプリング、ハズ、カム』は完成し、いよいよ2月18日より劇場公開を迎えることとなる!
また翌週の2月25日からは同じくクラウドファンディングにより資金を集めて製作された2作品、第4
回なら国際映画祭インターナショナルコンペティション部門を受賞した坂本欣弘初監督作『真白の恋』と第29回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に出品された今泉力哉監督作『退屈な日々にさようならを』も公開される。