日にち:11月19日(木)
会場:LEFKADA(レフカダ)
ゲスト:リュ・スンワン監督、武田梨奈
12月12日公開の映画『ベテラン』のリュ・スンワン監督が来日、19日に行われたPRイベントに出席した。また、同イベントには日本を代表するアクション女優で監督の大ファンだという武田梨奈も登場。武田が『ベテラン』の登場人物で紅一点のミス・ボンの前蹴りを披露し、会場を盛り上げた。
イベントでの主なやり取りは以下の通り。
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リュ・スンワン監督の作品は、社会が抱えている問題といつも関係しているような印象がありますが、社会的な問題に関心があるのでしょうか?
■監督:表面的には社会的な問題を扱っているように見えるのですけど、私としては社会的な問題の先に本質的に人間を描きたいという気持ちがあります。でも個人対個人を描いていると、どうしても社会が映し出されることになりますね。
日本ではあまり馴染みがないのですが、韓国における「財閥」というのはどういう位置づけになるのでしょうか?
■監督:そうですね、世の中のすべてのことがそうだと思うのですが、両面性、つまり良い点と悪い点があるように思います。韓国では今の経済発展の元を作ったのが、いくつかの大企業であり会社の人物であるわけです。一方、そこには副作用もあって、会社を個人の所有物として考え、家族が世襲するということも生まれます。そして事業を拡大するために本来なら手を出さなくてもよい庶民の領域にも入って踏みにじることも出てきていると思います。
私は良いお金持ちが増えてほしい、と思っています。でも「財閥」という言葉を使った瞬間、富に対する良くない感情も伴われるような気がします。私自身は「財閥」そのものが悪いとは思っていません。「財閥」を生み出してしまうシステム、そこに権力を維持するような方式が誤っているのではないかと思っています。
(武田梨奈が登場)
公開に先駆けて本作ご覧になっていかがでしたか?
■武田:久々に何回も観たくなるアクション映画に出合いました! 元々ダサくてカッコいいアクション映画が好きなのですが、自分のツボにハマる作品がやっときた! って感じです。
■監督:こんな美女に褒められて……何の言葉もありません。私はこの作品を作る時に、普遍的な感受性を大切にして作りたい、と思っていました。『ベテラン』は愉快で溌剌とした作品に見えるかもしれないのですが、その裏には重いテーマが隠されているんです。大人なら世の中がどんな風に回っているか十分わかっていますが、私たちの後の世代まで、こういった暗い世の中を残してはいけないと思ったので、この作品を後の世代の子供たちが観たときに、何か考えてくれるような作品を作りたいと思いました。そのためには、気楽に見られて楽しめる部分も必要なのではと意識しました。
実は、監督の大ファンである武田さんからお願いがあるそうですね?
■武田:映画の中で、(紅一点刑事の)ミス・ボンがとび前蹴りをやるシーンがありますよね。私、男の熱い映画の中で女性が一人活躍するという場面に憧れていまして、監督、よかったらぜひ見て御指導いただけますか?
(監督は快諾し、武田がスタッフが構えるミットめがけて、とび前蹴りを披露)
■監督:武田さんの蹴りに蹴られたいです! 指導するまでもなく、完璧な姿勢で本当にカッコいいです。武田さんの何か別の技も見たいですね。
(予想外のリクエストに応え、武田が今度は後ろ回し蹴りを披露)
■監督:誘拐して撮影現場に連れていきたいです! もしチャンスがあれば、武田さんのこの素晴らしいアクションが私の作品の中で観られる日がくればよいですね。
■武田:いつでも呼んでください! いつでも韓国に行きます!
そういえば、監督のアクションシーンには、水道管とか何か出っ張ったところにぶつかるというシーンがよく見られますね。
■監督:アクションの見せ方は色々あると思います。殴った側の快感を見せる、はたまた殴られた側の苦痛を見せる。私は両方を適度に混ぜてアクションを見せたいと思っています。
主人公のすごく辛い状況を見せられると、観客は主人公をもっと応援したくなると思うんです。そのために主人公の苦痛をもっとストレートに伝える方法はないか、と考えると、観客の皆さんにとって、自分が知っている苦痛ならば共感できるかと。例えば私たちは銃に撃たれた経験はなくても、家の中の床に子供が散らかしたおもちゃを踏んでしまって痛いとか、紙で手を切ってしまって痛いとか、そういう範囲ならわかりますよね。
観客の皆さんが認識できる苦痛をスクリーンで少し大きく見せて、そういう苦痛を伝えたいと思っているので、そんな演出になっているのだと思います。
最後に、これから本作を観る皆さんに一言お願いします。
■武田:アクション映画だと女性は観にくいと思われるかもしれないですが、この作品は男女、年齢関係なく楽しめて、観終わったあと、すごく心が熱くなれる映画だと思います。観たあとはきっとテンションが高くなり、2回、3回観られる映画です!
■監督:武田さんの話を聞いて、私もこの作品を観たくなりました(笑)。この作品は、愉快な雰囲気でスタートするのですが、途中で怒りを感じることもあるでしょう。そして最後は痛快な気持ちで締めくくれると思います。これから観る方は、この映画を観てウケる~と思ったら隣を気にせずどんどん笑ってください。もし周りは笑っているのに自分はつまらないなーと思ったら、それは座った席が良くなかったということです(笑)。
この作品には世の中を生きていく中で、正義の価値や人に対して礼儀をもって接する人たちが出てきます。私は庶民が勝利する映画を作りたいと思って取り組みました。どうか楽しんでご覧ください。