稀代の怪奇作家シャーリイ・ジャクスンは、若い夫婦を家に迎え入れたことで創作のインスピレーションを得ていく--。「空はどこにでも」の奇才ジョセフィン・デッカーが監督、巨匠マーティン・スコセッシが製作総指揮、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のエリザベス・モスが主演を務めた伝記的サスペンス「Shirley シャーリイ」が、2024年夏にTOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。場面写真が到着した。
1948年にニューヨーカー誌で発表した短編小説『くじ』がセンセーションを巻き起こしたシャーリイ(エリザベス・モス)。その後、ベニントン大学に通う18歳のポーラが失踪した未解決事件を題材に、長編小説に取り組んでいたが、思うように進まない。ベニントン大学教授である夫のスタンリー・ハイマンが機嫌をとって執筆へ向かわせようとしても、シャーリイは引きこもって寝てばかり。
そんな二人の家に、スタンリーの補佐の職を得たフレッドと妻のローズがしばらく居候することに。初めは他人が家に上がり込むのを嫌がっていたシャーリイだが、ひどく扱われても懲りずに世話を焼いてくるローズと接する中で、執筆のインスピレーションを得ていく。対するローズもシャーリイの魔女的なカリスマ性に魅了され、二人の間に奇妙な絆が芽生える。しかし、この風変わりな家に深入りしてしまった若夫婦は、自分たちの愛の限界を試されることに……。
シャーリイ・ジャクスンの小説さながらに幻惑的な映画世界を紡いだデッカー監督は、「ある批評家か伝記作家が〈シャーリイは政治的な作家ではない〉と指摘していたが、しかしシャーリイは私的なレベルにとどまりつつ政治を意識していたと思っている」と指摘。「だからこそ彼女の作品は今でも響き続けるのだ。彼女の作品は非常に人間的だから時代を超えて読まれている。シャーリイは非日常的な設定、心理描写、あるいは潜在意識に訴える巧みなリズムを使って人種差別、階級差別、性差別と闘っていたのだ」と訴える。
脚本を手掛けたサラ・ガビンズは「彼女は数多くの短編や長編を残したが、ホラー作品によくある吸血鬼やゾンビや幽霊や神話上の怪物は登場しない。その代わり日常のありふれた風景の中に恐怖を見出すのがシャーリイの小説の特徴でもある。〈人間こそ恐ろしい怪物であり、私たち自身の精神が血に飢えた悪魔的な妖怪であり、私たちの社会はのどかなパーティーを楽しみつつ石打ちの刑にも加われる気まぐれな人々の集まりである〉」と解き明かす。
シャーリイの夫スタンリーを演じるのは「シェイプ・オブ・ウォーター」のマイケル・スタールバーグ、フレッド役は「ウォールフラワー」のローガン・ラーマン、ローズ役は「グッバイ!リチャード」のオデッサ・ヤング。映画は2020年のサンダンス映画祭でUSドラマ部門審査員特別賞を受賞した。不穏にして刺激的な心理劇に注目したい。
「Shirley シャーリイ」
監督:ジョセフィン・デッカー
脚本:サラ・ガビンズ
原作:スーザン・スカーフ・メレル(『Shirley』未邦訳)
撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン 美術:スー・チャン 編集:デヴィッド・バーカー 衣装:アメラ・バクシッチ 音楽:タマール=カリ 音楽監:ブルース・ギルバート、ローレン・マリー・ミカス キャスティング:ケリー・バーデン、ポール・シュニー
出演:エリザベス・モス、マイケル・スタールバーグ、ローガン・ラーマン、オデッサ・ヤング
2019年/アメリカ/英語/107分/アメリカン・ビスタ/原題:Shirley/字幕翻訳:橋本裕充
配給・宣伝:サンリスフィルム
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公式サイト:https://senlisfilms.jp/shirley