2023年ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員特別賞を受賞しもっとも大きな喝采を浴びるとともに物議を醸し、ヨーロッパのみならず世界中で激しい論争を巻き起こしたポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド最新作『人間の境界』が、5月3日(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開。
ポーランドとベラルーシの国境で「人間の兵器」として扱われる難民家族の過酷な運命を描いた、スリルと慟哭の衝撃作。監督は、3度のオスカーノミネート歴を持ち『ソハの地下水道』『太陽と月に背いて』など数々の名作を世に送り出してきたポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。2023年ヴェネチア映画祭コンペティション部門では、その複雑かつスリリングで息をもつかせない展開が、モノクロームの圧巻の映像美とともに絶賛を集め、審査員特別賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭の観客賞をはじめ、これまでに18の賞を受賞、20のノミネートを果たし(2024年3月7日時点)世界各国の映画祭で高い評価を獲得している。2023年9月に公開されたポーランドでは公開されるや2週連続トップの観客動員を記録。ポーランド映画として当時年間最高となるオープニング成績をたたき出し、異例の大ヒットとなった。
この度、本作の日本版予告編が解禁!
予告編冒頭のテロップで、2021年にベラルーシがEUの混乱を狙いポーランド国境に大量の難民を移送し、この難民たちは<人間兵器>と呼ばれることになった映画の背景を紹介。続けて、ベラルーシ経由でポーランドに渡ることで安全なうちにEUに亡命できると信じたシリア人家族たちが飛行機でベラルーシに向かっている様子を映し出す。EUに暮らす親戚のサポートもあり手筈は万端なはずだったが、ポーランドにたどり着いたと歓喜する彼らを待ち受けていたのは、彼らを“観光客”と揶揄する武装したポーランドの国境警備隊による強制排除だった。彼らは非人道的な扱いを受けたすえベラルーシに戻され、極寒の森に敷かれる鉄条網を隔てた両国から繰り返し難民たちを押し付け合うような暴力に満ちた迫害を受ける状況を強いられていく。妊婦や幼い子ども達ですら例外ではなかった。映像では、ポーランドの国境警備隊に抵抗し、難民たちを懸命にサポートしようとする支援活動家グループの奮闘、警備の任務に当たる若い隊員による「僕がどんな気持ちで国境を守ってるか君に分かるか?」という苦悩とも取れる叫びなどを切り取り、難民だけでなくこの森に関わる様々な立場の者たちの視点を捉えていく。
併わせて解禁となった8枚の新場面写真では、欧州旗が施された壁の前で座り込む難民家族たち、森の中で昼夜問わず繰り広げられる緊迫のシーンなどのほか、水さえ与えられない森の中で母親が幼い子どもに木に付いたしずくを飲ませようとする予告編のラストで描かれた衝撃のシーンを切り取った。
本作の原題「Zielona Granica」は<緑の国境(地帯)>を意味し、森林の中に人為的に引かれた国境線を指す。ポーランド語辞書には<緑の国境を越える>が長年熟語として登録され<政府の許可なく非合法に越境すること>と説明される一方、国境検査の必要がない国境を指すこともあるという。映画に登場するシリア人家族や多くの難民たちは<緑の国境>を越えて、自由な世界(EU)を目指すのだが、終わりのない無間地獄のような森に囚われてしまう。果たして彼らはここから脱することはできるのだろうか…?
ホランド監督は、この事態を目の当たりにし「ワルシャワから3時間たらずの場所で、難民は彼らの運命を左右する人道的大惨事に直面している…私はその事実に心を動かされました。彼らの状況に象徴的なものを痛切に感じ、そしておそらくは、私たちの世界の道徳的・政治的崩壊につながりかねないドラマの前日譚を見たのです」などと、本作を製作することを決意した理由を振り返る。
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