是枝裕和監督、脚本・坂元裕二、音楽・坂本龍一による映画 『怪物』 (配給:東宝、ギャガ)が、6月2日(金)より全国公開。第76回カンヌ国際映画祭の【コンペティション部門】への正式出品も決定し、今年前半最も注目を集める映画『怪物』。
この度、完成披露試写会が5月8日に都内映画館で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、脚本家の坂元裕二、そして是枝裕和監督が参加した。
チーム『怪物』久々に勢ぞろいでの初お披露目に「泣きそう!」と感無量の安藤。そして第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門への正式出品決定との話題に是枝監督は「とても光栄です。ただカンヌ出品が決まる前から映画の公開日が決まっていたので不安と心配がありました。(コンペティションへの出品は)そんなに簡単なことではないので、公開を先に延ばした方がいいのではないかと思った。でも結果的にいい形で参加できるということでホッとしています」と喜んでいた。安藤も「『万引き家族』の時は初カンヌで朝ドラ撮影もありバタバタでしたが、今回はしっかりとじっくりと映画祭を味わおうと思います」とワクワク。2度目のカンヌ参加という永山は「一生のうちに何度も行けるものではないので堪能したい」と期待していた。
坂元との初タッグについて是枝監督は「以前から脚本を自分で書かないのであれば坂元さんにお願いをしたいと思っていて、ラブコールを送っていました。そして川村元気プロデューサーからプロットを開発しているとの話を聞いて内容を読む前から引き受けることを決めていました。それくらいこのタッグの実現には憧れていました」と念願の組み合わせだと表現。その坂元は「是枝監督は尊敬する脚本家でもあるので、そんな方に自分が書いていいのかと…。受け入れてくれたことに素直に驚きました」と嬉しそうだった。
パルム・ドール受賞作『万引き家族』直後にオファーがあったという安藤は「嬉しかった半面、是枝監督の現場にすぐに戻ることと、坂元さんの脚本であることのハードルを高く感じて、長いこと怖気づいていました。覚悟を決められない時間が長かった」と告白。しかし完成作品を目にして「その時の自分を一発殴ってやりたいような気持になって、参加できて良かったと思った。自分の想像を遥かに超えた作品に出させてもらって、参加した一員と言うよりも映画を観た一員として感動して涙が止まらなかった」と感涙を報告した。
坂元脚本作品の常連で是枝監督作品初参加の永山は「内容とか役とか出番がどうとか、そんなことはどうでも良くて、この二人の座組に入れたこと、このチームに入れたこと、それだけで幸せ者だと思った」と感慨。一方、黒川は壇上で撮影当時の自分の年齢を勘違いして安藤や永山から微笑ましくツッコまれながら「撮影中に監督さんがカフェカーを何度が差し入れしてくれて、マシュマロとイチゴが串刺しにされたお菓子を両手に持ってみんなに“いる?”と聞いて配っていたのが楽しい思い出」と笑わせた。柊木も「安藤さんと黒川君とで花火を見たのがとても綺麗で凄かった」と撮影中の一コマを思い出していた。
オーディションで抜擢した黒川と柊木について是枝監督は「黒川君は横顔のラインがいい。柊木君は会った瞬間に“この子だな”と思った」と起用理由を明かし、坂元も「お二人とも素晴らしいお芝居をされていて役に合っている。この物語は僕自身の子供の頃の体験を基にしていて、柊木君は転校していった僕の友達にとても似ている」と自らの思いを投影していた。
その黒川と柊木について安藤は「タイプの違う二人で芝居をしていても二人から刺激を受けた。完成作品を観ても自分の想像を遥かに超える二人が映っていて感動した」と俳優としてリスペクト。撮影中に永山からドライブに誘われたという黒川は「俳優とは監督の脳みその中にあるものを表現するものだと教えてくれて、とっても心に響きました」と感激し、永山は「肉が食べたいと言っていたので焼き肉屋に連れて行ったらジンギスカンしかなくて、食べたことないという想矢に無理矢理食べさせてしまった」と頭をかきつつ「想矢にとっての人生初ジンギスカン体験が僕で良かった」とまるで兄のような表情だった。
念願の是枝作品参加に高畑は「撮影前からワクワクしてインするのが楽しみだったけれど、私の初日が他の皆さんのクランクインとも被ってしまって、急に緊張。永山さんとも初めてだったので緊張感マックスでした。でも是枝さんが温かみを持ってくださっている気がして、じんわり温かい気持ちであっという間に終わってしまいました」と夢心地。一方、是枝監督ファンという中村は2015年に近所の映画館で『海街diary』の是枝監督トークショー付き上映会が行われた際「勝手に楽屋前に行って待ち伏せして“いつか僕を使ってください!”と言いに行った」と直談判していたことを明かし「それからかなり時間が経ったけど、2020年のコロナ禍の時に家族に“死ぬまでには是枝監督の作品に出られたらいい”と話していた数か月後にこのお話を頂いた。想いは叶うんだなと思った」と喜びを噛みしめていた。
本作は音楽を坂本龍一さんが手掛けていることでも話題。是枝監督は「撮影場所が諏訪に決まって風景が明解になったときに、夜の湖に坂本さんのピアノが響けば良いなと思った。撮影中も編集しながら坂本さんの既存の楽曲を映像に仮で当てていて、撮影後に仮当てした作品と共に手紙を書いて坂本さんにオファーしました」と起用経緯を説明。坂本からは「全部を引き受ける体力は残っていないけれど、音楽のイメージが何曲か湧いたので形にしてみます。気に入ったら使ってください」との返信があったという。劇中では本作のために坂本さんが作曲した新曲2曲と今年発売されたアルバム『12』からの数曲や既存曲を坂本さん了承のもと使用しており、是枝監督は「坂本さんが亡くなられたのは本当に残念だけれど、最後にこのような形でご一緒できたのは自分にとっても誇り。この作品に坂本さんの音楽は必要だったと誰よりも自分が感じています」としみじみしていた。
最後に是枝監督は「色々と特別なものが映った映画になったと思います。スタッフが完成試写を観てすべての人がいい仕事をしていると言ってくれたのが嬉しかった。いいチームで本当に素晴らしい映画が完成したと確信しています」と自信を持って『怪物』を送り出していた。
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配給:東宝 ギャガ ©2023「怪物」製作委員会