P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
伝記映画の主人公になるようなアーティストは、たいてい破滅的な運命をたどるものだ。
その理由は、創作上の葛藤、酒、女、孤独などさまざまだが、この2009年度フランス セザール賞作品賞受賞の映画「セラフィーヌの庭」は、それらと別次元の”聖なる破滅”とでも言うべき、女流画家の壮絶な人生を描いている。
パリ郊外とはいえ、1910年代とあって緑がいっぱいの田舎で、通いの家政婦として働く初老のセラフィーヌ。
一人暮らしで無愛想だが、自然の中で呼吸するように絵を描く彼女を、中央画壇に売り出したドイツ人の画商ウーデ。
自然を愛し、信仰厚い土着の魂と、芸術共和国の市民の自由な精神とが、離れ離れになりながら苦闘を重ねる。
これは、その奇縁の物語だ。
写し出されるセラフィーヌの絵の圧倒的な質感と、フランスの田舎の豊饒な色彩を捉えたカメラが素晴らしい。