網走番外地 望郷編 作品情報

あばしりばんがいちぼうきょうへん

橘真一は、彼が服役中に死去した父の墓参も兼ねて久方ぶりに長崎に帰郷した。橘がまだ十七、八のころ、旭組の若い衆の一人であった橘は、組長旭のおとなしいのをいいことに、旭組の縄張りをもぎとろうと悪業の限りをつくす新興勢力安井に腹をたて、単身安井組になぐりこみ、安井を刺し大怪我をさせた。旭はそんな橘をかばい、そっと東京に逃がしてくれたのだ。橘にとって長崎は、そんなホロ苦い思い出のある町だったが、今も旭組は、横暴を極める安井組のために、仕事をとられ苦しい毎日が続いていた。そんな時に橘が帰ってきたのだ。今は中風を病んで力衰えた旭統一とその息子で、安井組に闇打ちされて負傷した猛、それに橘に想いをよせながら猛と結ばれたルミ子が、橘を喜び迎えた。そうしたある日旭組に、外国船の積荷を下ろす大掛りな仕事がまいこんだ。だが、この仕事は、短い時間内にやりとげねばならない難しい仕事だ。仕事を任された橘は、安井組の妨害で集らない人手を見越して、網走での仲間中田らを長崎に呼んだ。一方の安井組も、なんとかこの機に旭組を叩き潰そうと、用心棒に人斬り譲次をやとい、街の愚連隊に旭組の仕事を妨害させた。しかしこの譲次が、組を思う橘の男気にホレて身をひき、旭組の仕事は無事終了した。だが、なおもあきらめきれない安井は、旭組が積荷を下ろした倉庫を爆破して、網走の前科者たちに罪をきせようとした。このため中田は殺され、これを知ってかけつけた病身の旭は重傷を負い、旭の片腕ともいうべき田所は殺された。橘は、この事件を目撃していた混血の娘エミーから聞き、単身安井組になぐり込んだ。橘の怒りに燃えたすさまじい剣に、安井組は四散し、唯一人ふみどまって橘と相対した譲次も紅に染った。やっとのことで探しあてた母親のもとに帰る、エミーを見送る橘の顔は爽やかだった。

「網走番外地 望郷編」の解説

伊藤一の原作を「続・網走番外地」の石井輝男が脚色・監督した“網走番外地”シリーズ第三作目。撮影は「可愛いあの娘」の稲田喜一。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督石井輝男
原作伊藤一
出演高倉健 林田マーガレット 嵐寛寿郎 中谷一郎 桜町弘子 砂塚秀夫 待田京介 潮健児 秋山敏 伊達弘 大槻憲 安部徹 関山耕司 沢彰謙 沢田浩二 滝島孝二 東野孝彦 石橋蓮司 八代真矢子 田中邦衛 由利徹 ジョージ吉村 杉浦直樹 東野英治郎 梓英子 国景子 相馬剛三
配給 東映
制作国 日本(1965)
上映時間 88分

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ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

このシリーズ第3弾の「網走番外地 望郷篇」は、網走帰りの高倉健が、故郷の長崎へ帰って来たことから物語が始まる。

”八人殺しの鬼寅”こと、嵐寛寿郎は、この作品のみ、旭組の親分役で登場している。

田中邦衛や由利徹、砂塚秀夫、”番外地ファミリー”の妙味。
林田マーガレット演じるハーフの生意気さも微笑ましい。

何よりこの「望郷篇」が、シリーズ屈指の傑作とされる最大の要因は、高倉健が悪玉の安部徹らを斬殺した後のシークエンスに集約されている。

「七つの子」を口笛で吹きながら、静寂の中、現われる杉浦直樹。
肺病の殺し屋という特異なキャラクターも、エキセントリックなら、高倉健が「よく逃げねえでいたな」と言うのに対し、杉浦直樹が「飯食っちまったんでな」と交わされる会話も、可笑しみを誘い出す。

そして互いに、長匕首を向けて、一対一で斬り合う一瞬を、再生&停止の連続で見せる、石井輝男監督の映像感性と、演技者の阿吽の呼吸が素晴らしい。

最終更新日:2023-11-19 16:00:02

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