あれが港の灯だ 作品情報

あれがみなとのひだ

日野漁業の底曳き船第一日乃丸と従船第二日乃丸は、後藤漁撈長の指揮で李ライン周辺に操業したために怪船に攻撃を加えられた。第二日乃丸は拿捕され、逃げのびた第一日乃丸は銃弾を浴びて帰港した。日野漁業の女船主日野千代は、第一日乃丸を矢坂に売り渡し、解散を決めた。第二日乃丸の船長である長男一郎を奪われた漁撈長の家では、母きよ、嫁千鶴子が怒りと悲しみに泣く。千鶴子は一郎の子を宿していた。帰ってきた第一日乃丸の若い船員木村と茂樹を、美果子が迎えた。美果子は町で果物を売っている娘だ。木村はそこで小学校で一緒だった石田に会った。木村の顔はなぜかくもった。茂樹は木村を誘って町の女を買った。木村の傍に横になった女は、木村の生れを見抜いた。木村は日本人ではなかった。木村は彼の故郷がひくライン問題に、複雑な境地に追われていた。半月後、矢坂は第一日乃丸と第二矢坂丸を組ませ、出漁の準備にかかった。第二日乃丸逮捕とともに銃弾を受けて死んだ西岡甲板長の長男浩も仲間に入った。ライン内に突っこむ、漁撈長は心にそう決めていた。石田が美果子を誘って港へ出た。彼は突然美果子を抱いたが、彼女は拒んだ。「木村が好きなんじゃな」石田は木村の故国の秘密を知っていた。出航の前日、木村は漁撈長に自分の故国を告白した。皆、木村を明るい笑顔で囲んだ。船は出た。燈火管制の闇の中で突如争いが起った。漁夫松村が木村をスパイと罵ったからだ。松村は五年間の抑留のため、木村の故国を徹底的に憎んでいた。二度目の網が投げられた時、怪船が現われ矢坂丸を追った。網がペラにからんで、運転不能となった。ナイフをくわえた石田と茂樹が波間にとびこんだ。木村、続いて松村も。網はなかなか切れない。浩が制止をふりきって波間に消えた。網はペラから切り離された。が、浩が浮き上らない。木村は再びもぐって浩を救った。だが、この時怪船が第一日乃丸に接舷した。警備官が小銃を携えて一人日乃丸に飛び移った。その瞬間日乃丸のエンジンがかかって前進したが、再びストップした。警備官から奪った銃を抱いた石田は階段を駈け上った。彼らに続こうとした木村を、石田が突きとばし銃口を向けた。巡視船あまつが急行し、彼らを救助した。木村は流れ弾にあたり、同胞であるべき警備官たちの私刑をあびながら死んだ。怪船に曳航されている日乃丸を見守る漁夫たちは口々に木村を罵った。漁撈長だけが黙っていた。その背に、浩が「僕は一生船にのります」と決意をもらした。

「あれが港の灯だ」の解説

李ライン周辺に操業する漁夫の不安な生活を通じて、海をへだてた民族同士の悲劇を描いた「もず」の水木洋子の原作・脚本を、今井正が「白い崖」に次いで監督した。撮影は「弾丸大将」の飯村雅彦。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督今井正
原作水木洋子
出演江原真二郎 高津住男 岡本四郎 安田千永子 岸田今日子 山村聡 中山昭二 清川虹子 長谷川裕見子 村瀬幸子 加藤嘉 河野秋武 山本麟一 小笠原章二郎 潮健児 岡部正純 久地明 多麻井敏 柳生博 金井大 鈴木啓太郎 辰巳敏久 飯島与志夫 桜むつ子 浅沼創一 五月藤江 東百合子 浦野みどり 多々良純 浪花千栄子 谷本小夜子 木村功 沢彰謙 増田順司 内藤勝次郎 豊野弥八郎 三重街竜 穂高稔
配給 東映
制作国 日本(1961)
上映時間 102分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「霧の小次郎」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-05-21

当時私は遠洋漁業の乗組員だった。この映画は長い航海を終えて入港中の映画館で観てとても感動した。李ラインでは韓国警備艇による拿捕が繰り返されていて、海上保安艇の必死の割り込みで警備艇をかわしていた。遠洋マグロでもインドネシア警備艇からの銃撃があった。北方でもソ連警備艇からの銃撃等日常茶飯事だった。とにかく遠洋航海での操業は命がけと言っても過言ではないと思う。実際に死者も出ていたからだ。海上保安官と漁師はこの時ほど一体に感じたことはない。

最終更新日:2023-05-31 16:00:02

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