あの愛をふたたび 作品情報
あのあいをふたたび
今、ここサンフランシスコ空港では、映画のロケが行なわれていた。フランスの映画女優フランソワーズ(A・ジラルド)は、スタッフとの和気あいあいの雰囲気の中で、不倫の恋にかける人妻を演じていた。そして、本番を撮りおえたロケの一行は、ハリウッドの撮影所に移った。この映画の音楽を担当しているアンリ(J・P・ベルモンド)は、ある夜、フランソワーズをホテルのバーへ誘った。アンリの気さくな人柄とユーモアに、彼女は楽しい夜を過すことが出来た。やがてロケ撮影が終り、僅かの休暇が訪れた。さっそく、アンリは、熱心にフランソワーズをラスベガスに誘った。このささやかな背徳のラブ・アフェアは、フランソワーズにとって魅力であった。いまや、おのおのが決った時間に、アンリは妻(M・P・コンテ)、フランンワーズは夫(M・ボジュフィ)と、電話で話し合うことだけが、彼らを日常に結びつけていた。しかし、このサラリと割り切ったはずのラブ・アフェアも、自然と本物の恋にエスカレートし、フランソワーズはもの想いに沈むようになった。自分の心の動揺に危惧を感じた彼女は、一人アンリを南部の町に残し、ニューヨークへ立った。彼女の胸には、さびしげにさまようアンリのイメージがかすかなうずきとともに浮んでいた。いよいよ彼女が帰国する日、アンリから再会を希望する電話が来た。フランソワーズは家族のもとに帰ったが、家庭には断層が出来ていた。アンリとの約束の日、彼女は少なからず夢を抱いて、ニースへ出かけた。だが、彼はついに姿を見せなかった。ひとり立ちつくすフランソワーズの頬に、いつしかどうしようもない自嘲の笑みが浮んで消えた。
「あの愛をふたたび」の解説
ロケ先でめぐり逢った中年の映画女優と作曲家のラブ・アフェア、その微妙な心理のひだ。製作は「パリのめぐり逢い」のアレクサンドル・ムヌーシュキンとジョルジュ・ダンシジェール、監督・撮影・脚本はクロード・ルルーシュ、台詞はクロード・ルルーシュとピエール・ユイッテルヘーヴェンの共作。衣裳はピエル・バルマン、音楽は「雨の訪問者」のフランシス・レイ、編集はクロード・バロウがそれぞれ担当。出演は「暗くなるまでこの恋を」のジャン・ポール・ベルモンド、「パリのめぐり逢い」のアニー・ジラルド、マリア・ピア・コンテ、マルセル・ボズフィなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1970年5月23日 |
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キャスト |
監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジャン・ポール・ベルモンド アニー・ジラルド マリー・ピア・コンテ マルセル・ボズフィ |
配給 | ユナイト |
制作国 | フランス(1970) |
ユーザーレビュー
総合評価:4点★★★★☆、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-19
クロード・ルルーシュ監督の「あの愛をふたたび」は、前作の「愛と死」で、かなり無理をしたルルーシュが「男と女」や「パリのめぐり逢い」の系列へ戻った作品だ。
アメリカへロケに来たフランスの女優アニー・ジラルドと作曲家のジャン=ポール・ベルモンドが結ばれ、西部各地で愛の観光旅行を楽しむが、それぞれ夫や妻や子供がいるので、絶えず隙間風が吹き込む。
フランスへ帰ったアニーは、夫と別れる決心をして、ベルモンドに会いに、約束の空港へ行くが、彼は現れない、というお話を、ルルーシュは技巧たっぷりに切なくも楽しく描いてみせる。
現実の場面かと思えば、撮影中の場面だったなどという、トリッキーな演出を数多く取り入れ、色彩の画調は快く、ラスベガスからトゥーソンで、ガン・ファイト・ショーを見物。
ジョン・フォード監督の西部劇でお馴染みの、モニュメント・ヴァレーでは、インディアンの大群に追われる愉快な空想をまじえて、例の雄大な岩山の風景の中を白い車が颯爽と走るのが美しい。
こんな風にテクニックを駆使して、巧く作った映画は私の大好物で、だんぜん嬉しくなりましたね。 とにかく、アメリカ・ロケを最も賢明に生かした作品になっていると思う。 また、恋愛映画の観点から観ても、見どころ十分で、恋愛旅行を続けているのに、二人とも絶えず夫と妻に長距離電話を取り続けるんですね。 大人の感覚の浮気と言ってしまえば、それまでだが、その浮気でなくなったアニーが、万が一を期待して空港へ行き、ベルモンドが乗ってくる筈の旅客機が着くまで、ソワソワと落ち着かず、彼がとうとう降りてこないのを見て、自嘲的な苦笑を浮かべ、その苦笑が涙寸前の表情に変わるまでのクローズアップでFINというラストなど、ペーソス豊かに女心を描いていて、そこにルルーシュの盟友である、フランシス・レイの心の琴線を震わすリリカルな音楽が流れてきて、実に抒情溢れるシーンになっていたと思う。