白い恐怖 作品情報

しろいきょうふ

長年精神病治療院「緑の園」の所長だったマーチソン博士が更迭され、新所長としてエドワーズ博士を迎えることになった。ただ1人の女医コンスタンス・ピーターソン博士は、美人だが研究一徹で、同僚の求愛にも見向きもしない性格だった。だが治療院にやってきたエドワーズ博士を名乗る若い男にコンスタンスは一目惚れをしてしまう。ところが、食事をしながら彼女が計画中のプールの略図をフォークの先で白いテーブルクロスに描いた途端彼の様子がおかしくなる。その場は何事も無く収まり二人は急速に愛情を深める。夜更けに眠れぬコンスタンスは、図書室に本を取りに行くが、その途中でエドワーズの部屋に立ち寄り彼と抱き合う。その時彼女の部屋着の白地と縞に気付いた彼はまたしても荒々しい態度を取るのだった。そこへ患者のひとりが自殺を図ったと連絡が入り、手術室に駆けつけたエドワーズは、その場に卒倒してしまう。コンスタンスはエドワーズの本の署名と彼がよこした手紙の署名が異なることに気付く。彼のシガレット・ケースにはJ.B.の頭文字が入っていた。エドワーズ博士を名乗る「男」は、自分は記憶をなくしており、おそらくJ.B.の頭文字を持つ男であり、本物のエドワーズ博士を殺して身代わりとなってここに来たんだろうと言い出し、逃亡する。コンスタンスはJ.B.が残した手紙から、彼がエンパイア・ステイツ・ホテルに身を隠していることを知り、ホテルに駆けつける。J.B.の手には火傷の痕があり、それが彼の記憶喪失症の原因を解き明かすと確信したコンスタンスは、J.B.を連れ恩師の精神分析学者ブルロフ博士を訪ねる。途中再び発作を起こしたJ.B.は空中戦闘のことを口走る。彼はロオの上空の空中戦で負傷し、記憶喪失症になったのだった。ブルロフ博士に夫だと紹介するコンスタンス。二人はブルロフ博士の家に泊まることとなる。その夜ブルロフ博士の家にある様々な「白」により、再び発作を起こしそうになるJ.B.。翌朝ブルロフ博士はJ.B.の治療を試みる。その結果彼の恐怖は雪とスキーに関係があると判る。事件が起きた場所がゲイブリエル・ヴァレーだと知ったコンスタンスとJ.B.はそこに向かう。目的地に着いた二人はスキーを始める。滑走中J.B.は全てを思い出す。自分の名前は「ジョン・バランタイン」であること。子供の頃不注意で弟を滑落死させてしまった罪に苛まれていたこと。エドワーズ博士は彼の記憶喪失症を直すために一緒にスキーをしてる時に断崖から落ちて死んだことを。ところが、この報告に従って断崖を調べた警察はエドワーズ博士の遺体から銃弾を発見する。殺人嫌疑で逮捕されるジョン。「緑の園」に帰ったコンスタンスは、初めてジョンがこの医院にやってきた時に、マーチソン博士がエドワーズ博士とは旧知なはずなのに、ジョンをエドワーズ博士として扱っていたことに気付く。実は、更迭を恨んだマーチソンが新任のエドワーズを殺害したのだった。コンスタンスに詰問されたマーチソンはもはや逃れられぬと悟り自殺する。無実となったジョンとコンスタンスは新婚旅行に出かけるのだった。

「白い恐怖」の解説

アルフレッド・ヒッチコックが「汚名」(46)に先立って監督した1945年度スリラー映画。フランシス・ビーディングの原作を「汚名」と同じくベン・ヘクトが脚色した。撮影は「船乗りシンバッドの冒険」のジョージ・バーンズ、音楽はこの作品でオスカーを得たミクロス・ローザ担当。夢の場面装置はシュルレアリスト、サルバドール・ダリ、主演は「ジャンヌ・ダーク」のイングリッド・バーグマンと「白昼の決闘」のグレゴリー・ペックで、「夢の宮廷」のロンダ・フレミング、「Gメン対間諜」のレオ・G・キャロル、ロシア出身の老優マイケル・チェホフ、「死の谷」のヴィクター・キリアン、ビル・グッドウィンらが助演する。

公開日・キャスト、その他基本情報

配給 SRO=東宝
制作国 アメリカ(1945)
上映時間 111分

動画配信で映画を観よう! [PR]

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-08

この映画「白い恐怖」は、フロイトの精神分析学をストーリーに大胆に導入し、人間の罪の意識をキーワードに、実験的映像で心の内面を抉った作品だと思います。

人間には多かれ少なかれ、幼児体験によって、自らを無意識に規制することが、ままあるような気がします。
このアルフレッド・ヒッチコック監督、イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック主演の「白い恐怖」は、原題の「SPELLBOUND(呪文で綴られた)」が示すように、そんな幼児体験によって、無意識に"罪の意識"に縛られた男が、愛する者の協力によって、それを克服していく愛の物語になっていると思います。

とある精神病院に、新院長のエドワード(グレゴリー・ペック)が赴任してきます。
女医のコンスタンス(イングリッド・バーグマン)は、彼に次第に惹かれていくが、実は彼が本物のエドワードではなく、記憶喪失者であることがわかってきます。

やがて、彼に本物のエドワード殺しの容疑がかかるが、無実を信じるコンスタンスは、彼の記憶を甦らせようと、一緒に逃亡しながら、精神分析を駆使して真実を究明していくのだった----------。

1944年のこの作品「白い恐怖」は、アルフレッド・ヒッチコック監督が、以前から興味を抱いていたという、フロイトの精神分析学をストーリーに大胆に導入した、初めての心理学映画になっていると思います。 以後、彼の作品には、「サイコ」「マーニー」など、同系統の作品がしばしば登場することになりますが、特に精神分析学が"謎解きの鍵"となる心理サスペンスという点で、「マーニー」の先駆的作品になっていると思います。 しかし、当時としては斬新に見えたであろう、このストーリー展開も今の時点で見ると、正直、少し陳腐なものに見えてしまいます。 「濡れ衣を着せられた者の逃避行」だとか、「追われながら追う」と言ったヒッチコック作品の典型的なスタイルをとってはいるものの、フロイトの精神分析や夢判断を露骨に導入し過ぎているため、謎解きが定石通りであまりにも呆気ないのです。 このことは、後の「マーニー」にも言えることで、つまり、論理では説明不可能な人間の心理を多く見ている、我々現代人にとって、この作品のストーリー展開は、あまりにも物足りないのです。

最終更新日:2024-06-18 16:00:01

広告を非表示にするには