疑惑の影 作品情報

ぎわくのかげ

カリフォルニア州サンタ・ローザの町に住むニュートン一家は平和な生活を続けていたが、長女のチャーリーは家庭をもっと活き活きとしたものにしたいと思い、母の弟のチャーリー叔父に来てもらいたいと思っていた。当のチャーリー叔父は、ある犯罪のため身に迫る危険を知ってカリフォルニア州へ高飛びして、偶然にもニュートン一家に滞在することになった。一家は悦んで彼を歓待した。ある日、ジャック・グラハムとサンダースという二人の男がニュートン家を訪れて来た。彼等は政府の調査員として米国の中流家庭の調査に来たとのふれこみだったが、チャーリー叔父は彼等が探偵であることを見破り二人を避けていた。ところが、うっかり写真に撮られてしまい、彼は怒ってフィルムを奪った。そのただならぬ様子に傍らにいたチャーリーは怪しんだ。その夜チャーリーはジャックから、叔父はある殺人事件の容疑がかかっており、彼らはその確証を握りに東部の警察から派遣されて来たのだと言われ、協力を求められる。たが、叔父を信用しているチャーリーは、彼の申し出を固く断った。しかし叔父が破り棄てた新聞の記事に疑いを持った彼女は、早速図書館へ行き、新聞の綴込みを調べると、金持ちの未亡人を次々に殺害して金を奪った犯人が西部へ逃亡した形跡があり、目下厳探中であると書かれてあった。そして最後の被害者の名前が、叔父から土産にもらった指輪の裏に刻まれている頭文字と符合しているので、もはや叔父の犯罪を認めないではいられなかった。チャーリーは家族の名誉を守るために、叔父が捕縛される前に逃がそうと決心した。叔父に対して自分が総てを知っていると匂わせたり、証拠となるべき指輪を示して退去を迫ったが、叔父は平気な顔で滞在を続けるのであった。そして逆に自分の身の安全を計るために、事実を知っているチャーリーを殺そうとして、排気ガスを充満させたガレージに彼女を閉じこめたが、幸いにも彼女は助かった。そのうちに叔父は自ら出発すると言い出した。彼は町で知り合った金持ちの未亡人と密かに他所へ行く予定だったのだ。出発の日、見送りに来たチャーリーを、叔父は列車から突き落として殺そうとし、もみ合ううちに叔父は列車から転落してしまった。サンタ・ローザの教会で、彼の葬式が行なわれた際には、チャーリーとジャックは二人だけが知っている事実を胸に秘めて参列していた。

「疑惑の影」の解説

監督は「レベッカ」「汚名」「白い恐怖」のアルフレッド・ヒッチコック。主演はニューヨークの劇場出身で、「ミニヴァー夫人」で助演女優賞をうけ「ヤンキースの誇り」でゲイリー・クーパーの相手役を演じたテレサ・ライト。助演は「恋の十日間」のジョセフ・コットン。1942年作品。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督アルフレッド・ヒッチコック
原作ゴードン・マクドネル
出演テレサ・ライト ジョセフ・コットン マクドナルド・ケイリー ヘンリー・トラヴァース パトリシア・コリンジ ヒューム・クローニン ウォーレス・フォード エドナ・メイ・ウォナコット Charles Bates
制作国 アメリカ(1942)
上映時間 108分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-02

退屈な日々を過ごす娘チャーリー(テレサ・ライト)の所へ、突然、彼女の叔父(ジョゼフ・コットン)が現われ、しばらく一家とともに暮らすことになる。

自分と同じ名前を持つこの叔父を、娘は幼い頃から敬愛しており、彼女は大歓迎だったが、その叔父にはどうも不審な点が多かった。

やがて、二人の探偵がやって来て、叔父に殺人容疑がかかっていることを知らされる。
娘は不安になり、調べ出した新聞には未亡人殺しの記事が載っていた。

しかも、叔父が土産にくれた指輪に彫ってあったイニシャルは、被害者のそれと同じだったのだ。

果たして、叔父は本当に殺人犯なのか? 娘の不安は恐怖へと変わっていく——-。

不気味な演奏の「メリー・ウィドー」の序曲のワルツとともに始まるこの映画は、殺人事件そのものや犯人探しがテーマではなく、大好きな叔父さんが、その犯人ではないかと疑う、姪と叔父の物語だ。

この映画は、登場人物の恐怖心理を、スリラーの神様ヒッチコック監督が巧みに映像化していて、二人のチャーリー、二人の探偵、列車の走るシーンが二つなど、二組のペアが次々と登場する。 姪も叔父も同じチャーリーであるのは、ヒッチコック映画の秘密を解く鍵の一つである、左右対称のモチーフ、同じ人間の表と裏、天使と悪魔、他人の犯した罪のために苦しむ人間と犯罪者の葛藤のイメージなんですね。 もちろん死体が出てくるわけではなく、のどかな田舎町の平和な家庭を舞台にした、ヒッチコック監督ならではのサスペンス映画になっていると思う。 そして、ジョゼフ・ヴァレンタインの撮影による緻密な映像が、不安感を見事に盛り上げている。

この映画は、「わが町」で知られるアメリカの劇作家ソーントン・ワイルダーが、ヒッチコックに乞われてシナリオを書いたもので、異色のサスペンス映画というよりも、ずばり、映画の本質とはサスペンスそのものであることを教えてくれる映画だ。 そして、ヒッチコック映画のお楽しみでもある、彼の登場シーンは、冒頭の列車の中の客席の中の一人としてチラッと出てきますので、お見逃しのないように。

最終更新日:2024-06-12 16:00:02

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