噂の二人 作品情報
うわさのふたり
カレン・ライト(オードリー・ヘップバーン)とマーサ・ドビー(シャーリー・マクレーン)は学生時代からの親友であり、共同で寄宿学校を経営していた。父兄からの信望も厚く、カレンの2年越しの恋人はこの地方の有力者ティルフォード夫人の甥である医者のジョー・カーディン(ジェームズ・ガーナー)だった。しかしカレンが婚約に踏み切った時、なぜかマーサは重い微笑で答えただけだった。ティルフォード夫人の孫娘メリーは病的なほどのわがまま娘で、学校でのしくじりに家へ逃げ帰り、そのまま学校へ戻りたくないばかりに祖母に訴えた。「カレンとマーサは同性愛なの!」と。噂はたちまち広まり、驚いた父兄たちは子供を引き取ってしまった。カレンとマーサはティルフォード夫人を訪問し名誉棄損で訴えたが潔白を証明することができないばかりか、かえって2人は町中の噂と嘲笑の中に身をさらさなければならなくなった。噂の2人は無人の学校にひっそりと暮らしていたが、ジョーですらかすかな疑いを持っていることを知ったカレンは婚約を解消してしまった。マーサはそれを知って心が激しく揺れるのを覚えるのだった。やがて孫娘メリーの嘘を知ったティルフォード夫人が謝罪に来た。カレンは久しぶりに空の青さをしみじみとした思いで仰いだが、ふとそこにいないマーサに気づき不安にかられて名を呼んだ。2階にかけ上がったカレンが見たのは、暗く閉ざされた部屋の中で自らの生命を絶ったマーサの姿だった。カレンはただ1人で野辺の送りを済ませ、今はもう見知らぬ人ばかりの町ででもあるかのように、後もふり向かずに去って行くのだった。
「噂の二人」の解説
ウィリアム・ワイラーが「ベン・ハー(1959)」以来、2年ぶりに製作・監督した作品。リリアン・ヘルマンの「子供の時間」は同じワイラーの監督で戦前、「この三人」として映画化されている。脚色は「青春物語り」のジョン・マイケル・ヘイズ、撮影は「許されざる者(1960)」のフランツ・プラナー、音楽は「荒馬と女」のアレックス・ノースが担当。出演者はオードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンスなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
配給 | ユナイテッド・アーチスツ |
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制作国 | アメリカ(1961) |
上映時間 | 109分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、5件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
カレンの婚約者ジョー(ジェームズ・ガーナー)にすら忍び寄る疑心、裁判を拒否した叔母の薄情さ、レズ志向を自認し命を絶つマーサら、各人それぞれを、ワイラー監督は実に的確に描き分けていくのです。
そして、親友を失ったカレンが、絶望感を抱きながら葬式の参列者の間を胸を張って歩いていく姿に、無理解な社会への怒りを凝縮させているのだと思います。
オードリー・ヘプバーンの澄んだ瞳が、躊躇なく真っ直ぐ正面を見据える、このラストのショットが、この作品の価値を2倍にも3倍にもしているのだと思います。
一個人が風評によって、社会から追放されるこの物語には、ウィリアム・ワイラー監督自身のマッカーシズムによる、ハリウッドの”赤狩り体験”が、色濃く反映されているのだと思います。
当時、それに抗議する委員会を結成し、その中心人物として活動したワイラー監督は、悪夢のようなこの事件に対する怒りを、ヘプバーンに代弁させているのだと思います。