P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-02
この映画「怒りの葡萄」は、文豪ジョン・スタインベックのピューリッツァー賞受賞の小説を、ジョン・フォードが監督した作品だ。
凶作と資本主義の歪みの中で、たくましく生きるアメリカ農民の姿を描き、アメリカ映画の新境地を開いた、社会派リアリズム・ドラマの名作だと思う。
名カメラマン、グレッグ・トーランドによる際立ったモノクロ映像と、ジョン・フォード監督ならではの力強いタッチで、1930年代のアメリカの小作農の惨状を、見事に浮き彫りにしている。
仮出所で刑務所を出て、4年ぶりに故郷のオクラホマの農場に帰ってきた、ヘンリー・フォンダ扮するトム・ジョード。
そこで彼が見たのは、荒れ果てた大地と飢えに苦しむ農民たちの姿だった。
久し振りに再会したトムの家族も同じ有様だったが、母親のマアのたくましさのおかげで、貧しいながらも元気でいた。
だが、土地はすでに人手にわたっていた。そこで、ジョード一家は、オンボロ車でカリフォルニアへと向かう。
だが、希望の土地カリフォルニアで彼らを待っていたのは——-。
トムに洗礼を授けた、元説教師のジョン・キャラダイン扮するケイシーは「自分達はただ一生懸命素直に生きたいと思っているだけなんだ」と、みんなに説く。 そして彼が、暴徒に殺された後は、トムがその気持ちを引き継いでいくことになる。 最初に殺されたケイシーは、いわばキリストであり、そうして、その教えを守っていくキリストの使徒を演じたのがトムではないかという気がします。 この映画は、未曽有の不況の時代において、キリストに対するひとつの気持ちのすがりまでも描いた作品だと思う。