汚れなき悪戯 作品情報

けがれなきいたずら

聖マルセリーノ祭を迎えたスペインのある小さな村。楽しげに丘の上の教会へ村人達が向う頃、貧しい家で病床に伏す少女を訪れた一人の僧侶は、この日にまつわる、今は忘れられた美しい奇蹟の物語を話して聞かせる--かつて戦争で荒れ果てたこの村が平和をとり戻し始めた頃、三人の老いた僧侶が訪れて来て丘の上の廃墟に僧院を建てたいと村長に頼んだ。やがて農夫たちの協力で僧院は建立、十年後、いつか十二人となった僧侶らは静かな生活を送っていた。ある朝、門前に幼い捨子を発見。彼等は赤児の両親が今は亡いと知ると、その日が聖マルセリーノの日であったことからマルセリーノ(パブリート・カルボ)と名付け世話を始めた。僧侶らは心をこめた愛憎を注いだが、将来を考えた僧院長は子供を引取ってくれる家庭を探した。だが結局は失敗。それは彼等が心秘かに願っていたことだった。五年の後、マルセリーノは天使のように無垢な悪戯っ子になっていた。少年は僧侶らを見たままそれぞれ仇名をつけて呼んでいたが、いつか天国にいると思われる母親のことを想う日が多くなった。ある日、野原で出逢った農家の若妻に母の姿を見た少年は、同じ年頃のマヌエルという男の子がいると知って、彼を空想の友達と考えて、一人ぼっちの遊びも楽しいものにした。祭の日、村に行った少年の僅かな悪戯は思いがけぬ混乱に発展、負傷者まで出た。村長の後を継いでいた鍛冶屋は、これを僧侶らに対する攻撃の口実とし、一ヵ月以内に僧院退去を命じた。僧侶たちは失望。何も知らぬ少年は一人、空想のマヌエルと遊ぶ中、納屋で十字架のキリスト像を発見、飢えと寒さで悩むように思われるキリストの許へパンや酒を運ぶ。ある嵐の晩、やって来た少年にキリストは好意に報いようとその願いを尋ねた。少年は天国のお母さんに会いたいと答え、古椅子に寄ったまま永遠の眠りに就いた。そのまわりには、どこからともなく光が輝く。奇蹟は村中に伝わり、葬式には鍛冶屋始め総ての村人が参加した。--話し終った僧侶が僧院へ戻る頃、教会から村人は帰途に就き、マルセリーノの祭も暮れようとしていた。

「汚れなき悪戯」の解説

ホセ・マリア・サンチェス・シルバの同名物語を彼自身とラディスラオ・バホダが共同脚色し、ラディスラオ・バホダが監督したスペイン映画。撮影はエンリケ・ゲルネル、音楽はパブロ・ソロサバルが彼の息子と共同担当。主役マルセリーノを、この作品で特に抜擢された六歳のパブリート・カルボ少年が演じる他、スペイン劇団の俳優ラファエル・リベリエス、アントニオ・ビコ、ファン・カルボなど。ホセ・ニエトとフェルナンド・レイが特別出演している。一九五五年カンヌ映画祭で特別子役賞を獲得。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督ラディスラオ・バホダ
原作ホセ・マリア・サンチェス・シルバ
出演パブリート・カルボ ラファエル・リベリエス アントニオ・ビコ ファン・カルボ ホセ・マルコ・ダボ アドリアーノ・ドミンゲス ファン・ホセ・メネンデス マリアノ・アサーニャ ホアキン・ロア ホセ・ニエト フェルナンド・レイ
配給 東和=東宝
制作国 スペイン(1955)
上映時間 91分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「グスタフ」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2019-10-18

スペイン映画の宝石。日本でもテーマ曲”マルセリーノの歌”が大ヒットして、リバイバル公開(今では死語に)で接した年代以上の人には忘れることのない名曲。作品内では、歌詞に合わせたマルセリーノの一日を紹介するモンタージュが、微笑ましい名場面となっている。キリスト教における奇跡は、他の宗教とは扱いが全く違っていて興味深い。また、同じスペイン映画「愛のアンジェラス」を並べてみると、同じラテン系でもイタリアやフランスよりスペインが、奇跡に関心が高い印象を持つ。純真無垢な幼き少年が神に召される奇跡の物語。天国を象徴する空の美しいモノクロ映像。子役パブリート・カルボの名演。素朴で敬虔な宗教劇が、そのまま映画の魅力になる。

最終更新日:2022-07-26 11:03:58

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