巨人と玩具 作品情報

きょじんとがんぐきょじんとおもちゃ

都心のある大きな駅の出口から、今日も群衆が無限に吐き出される。--駅前広場にはサムソン製菓のビルがある。その宣伝課長は合田という男で、宣伝の鬼といわれていた。宣伝課員の洋介は彼の敏腕を尊敬していた。--キャラメルの売りあげ高が悪くなった。宣伝に新手を考えだす必要に迫られた。京子という少女を合田が拾ってきた。虫歯だらけのありきたりの小娘だ。ペロッと出す長い舌と、驚いたような笑い顔が変っていた。洋介の大学の級友横山は競争相手のヘラクレス洋菓宣伝部にいる。もう一つのアポロ製菓の宣伝課員倉橋雅美に、彼は洋介を紹介した。二人は愛しあった。京子のカメラ・テストの結果、彼女はネガ美人であることが判った。写真家の春川は彼女の一日を撮すと、それをあるカメラ雑誌に発表した。ジャーナリズムが騒ぎだした。週刊誌、ラジオ、ファッション・ショー……。これらすべての売り込みの後には合田がいた。彼は社のトレード・キャラクター決定会議を自分の思惑通りに運び、京子を使うことを重役連に承諾させた。いよいよ特売合戦だ。京子は今まで勤めていたボロ会社を止め、宇宙服を着て、ポスターやテレビで笑い始めた。虫歯がかえって効果的だった。ヘラクレスは動物の景品、アポロは地味だが母親に説得力のある奨学金。アポロが一頭地を抜いた売り上げを示した。しかし、アポロ・ドロップスに子供が中毒する事件が起った。サムソンはその足をすくうように大増産を始めた。まるで空巣狙いだ。合田は義父の矢代部長を追いやり、自分が部長になった。しかし莫大な宣伝費にもかかわらず、キャラメルはちっとも売れない。京子は洋介に前からずっと好き、恋人になってと言ったが、彼は断った。小売店が乱売を始めた。景気づけに宇宙展の会場に京子を配することに、合田は決めた。呼ばれてきた京子は以前の少女ではなかった。気取った歩き振りの、飾りたてた女であった。彼女の両親も長屋を引っ越したという。京子は合田の申し出を断った。契約にそんな箇条がないからという。合田は洋介に彼女を色仕掛で抱きこめと命じた。同時に彼は疲れから吐血した。西は京子の歌っている劇場に行き、そこで親友横山が彼女の黒幕、マネージャーになっているのを知った。今さら、京子を連れて来て何になる。叫びわめいてどうだというのだ。“怪物”の中で消化されて機械のように無慈悲な人間になるだけだ! 洋介は会社へ帰ると合田をののしり、彼を尊敬していたのを口惜しく思った。彼はやにわに宇宙服を着ると、雨の中を外へ出た。近づいてきた雅美に目もくれずに。その奇妙な姿を、合田がサムソン・ビルの窓からじっと見送っていた。

「巨人と玩具」の解説

文学界所載開高健の同名小説を、「結婚のすべて」の白坂依志夫が脚色、「氷壁」の増村保造が監督、同じく「氷壁」の村井博が撮影した異色ドラマ。主演は「命を賭ける男」の川口浩、「氷壁」の野添ひとみ、「大阪の女」の小野道子、高松英郎。色彩はアグファカラー。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督増村保造
原作開高健
出演川口浩 野添ひとみ 高松英郎 信欣三 伊藤雄之助 藤山浩一 小野道子 山茶花究 伊藤直保 飛田喜佐夫 春本富士夫 夏木章 高村栄一 伊東光一 大山健二 花布辰男 潮万太郎 高見貫 武江義雄 松山浩二 中江文男 浜口喜博 星ひかる 伊達正 村田扶実子 南方伸夫 町田博子 阿部脩 目黒幸子 山川あい子 堀込久子 渡辺鉄弥 小山内淳 杉田康 須藤恒子 田宮二郎
配給 大映
制作国 日本(1958)
上映時間 95分

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最終更新日:2024-04-13 02:00:06

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