東京日和 作品情報

とうきょうびより

亡き妻・ヨーコに捧げる写真集の出版の準備をしている写真家・島津巳喜男は、在りし日のヨーコのことを想い出していた。だが、甦ってくるのはふたりにとって最悪の日々だった頃のことばかりである。まず想い出されるのは、ホームパーティの時にヨーコが客である水谷の名前を呼び間違えたことを気に病んで、勤め先には巳喜男が交通事故で入院したと嘘をつき、3日間家を飛び出してしまったことだった。巳喜男は心配してあちこちを探し歩いたが、彼の気持ちをよそに、ヨーコはふらりと家に戻ってくる。どことなく当たり前の夫婦のように振る舞えないふたりは、何気ないことで気づまりな思いをすることも多く、巳喜男は、優しすぎるとヨーコに責められることさえあった。ある時のヨーコは、同じマンションに住むカギっ子の少年に自分のことをおばあちゃんと呼ばせた上、彼に女の子の恰好をさせようとする。また、実際は飛んでいない蚊が自分の周りを飛ぶように感じる飛蚊症を患ったりもした。しかし、嫌なことばかりではない。ジョギングの最中に偶然見つけたピアノ型の大きな石で、ともに雨に打たれながらピアノ演奏ごっこに興じたこともあれば、東京駅のステーションホテルで恋人同士のようなデートをしたこともあった。だが一方で、会社の無断欠勤が続いたり、カギっ子少年を遅くまで連れ出して騒動を起こしたりの奇行が増えたことも事実である。結婚記念日に出かけた福岡の柳川では、新婚旅行と同じ旅館に泊まり、川下りを満喫したかと思えば、またも突然行方をくらませたりして、そのたびに巳喜男を心配させた。旅行から帰った翌日、猫をもらう約束をしたヨーコは、待ち合わせに向かう途中で車に跳ねられ骨折してしまう。だが、そんなヨーコが巻き起こした事件のひとつひとつが、今の巳喜男の仕事に大きな影響を与えていたのだ。回想にふける巳喜男は、あの時、水谷の名を呼び間違えた原因を今さらに発見して、あふれる涙をこらえ切れなくなった。巳喜男は、自分の写真人生がヨーコとの出会いから始まったことを改めて感じている。

「東京日和」の解説

写真集出版の準備を進める写真家が回想する、亡き妻との日々を綴った純愛ドラマ。監督は「119」の竹中直人。写真家・荒木経惟とその妻・陽子による写真&エッセイ集『東京日和』をベースに、岩松了が脚本を執筆。撮影を「大統領のクリスマスツリー」の佐々木原保志が担当している。主演は「HAPPY PEOPLE」の竹中直人と「Love Letter」の中山美穂。97年度キネマ旬報ベスト・テン第9位。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1997年10月18日
キャスト 監督竹中直人
原作荒木陽子 荒木経惟
出演竹中直人 中山美穂 松たか子 三浦友和 鈴木砂羽 類家大地 浅野忠信 藤村志保 久我美子 村上冬樹 田口トモロヲ 温水洋一 利重剛 三橋美奈子 山口美也子 塚本晋也 中田秀夫 畠山明子 周防正行 森田芳光 中島みゆき 柳愛里 しりあがり寿 荒木経惟 須賀不二男 清田正浩 内田也哉子 石川真希 吉添文子 夏川さつき 野間洋子 駒塚由衣 菜木のり子 斉藤彩 津田寛治 日比野光希子
配給 東宝
制作国 日本(1997)
上映時間 121分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2017-09-19

東京・恵比寿の写真美術館で開催中の荒木経惟展を観ていたら本編を是非とも観たくなった。展示は妻・陽子とのセンチメンタル・ジャーニー等、モノクロームの美しい愛の私小説な組写真群…。此れは写真集で手にとって読むと更にホワイトが美しく印刷されている。中には小津安二郎監督のアイコン男優の笠氏のポートレイトも。限り無く映像的なアラーキーの世界の映画化に着眼した竹中直人・主演・監督の其のセンスも素晴らしいね。

最終更新日:2022-07-26 11:03:43

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