純愛物語 作品情報

じゅんあいものがたり

戦すんで十年、平和が訪れたとはいえ、ここ上野の山には今なお不幸な孤児たちが虚しい日日を過している。今しも、スリ仲間から足を洗おうとする孤児のミツ子を不良たちがリンチを加えようとしていた。その中の一人、貫太郎は、余りの残酷さを見てミツ子をかばいその難を救った。二人は孤児という共通の境遇から仄な慕情を感じ合い、更生を誓うが社会の風は厳しかった。遂に二人は悪いとは知りながらデパートでスリを始めた。が、忽ち刑事に捕り、ミツ子は聖愛学園へ、貫太郎は少年院へ送られた。貫太郎は一度は脱出したが再び捕り、それ以後は少年院の下山教官の補導で更生の道に励むようになった。一方ミツ子は優しく気を配ってくれる小島教官にさえ反抗するような荒んだ気持になっていたが、間もなく顔が蒼白となり油汗がにじむという異常な病気に冒され始めた。その病状は彼女が十年前、広島でうけた原爆症にほかならなかった。が、それとは知らぬミツ子は学園から逃走、放浪生活に入った。その頃、貴太郎は仮退院を許され近くの工場に務めていた。彼はソバ屋の出前持ちになっているミツ子を探し出し、明るく励ました。体に斑点ができるまでに病状の悪化していたミツ子も貫太郎の励ましで遂に病院を訪ねた。そこでミツ子は貧血症と診断を下され、金もないままにドヤ街へ身を移した。貫太郎は、そんなミツ子を励まそうと一日、ピクニックへと連れ出すが、それ以後ミツ子は病床に伏したままの身となった。衰弱し切った彼女を小島教官が探しだし病院に収容した時は死の寸前にあった。瀕死のミツ子の願いで貫太郎が駈けつけたが、病室にはもはや虚なベッドが残っているのみ。ミツ子が純愛こめて風邪気味の彼に作ってくれたマスクをはめた貫太郎は、流れ出る涙も拭わず夕暮の雑踏の中へと姿を消した。

「純愛物語」の解説

十二年前、広島に投下された原爆のため、病に冒され、死んで行った少女の純愛を通して非情な現実社会にメスを入れた問題作。「あらくれ(1957)」の水木洋子が原作を書き自ら脚色、「米」の今井正が監督した。撮影は「米」で今井正と組んだ中尾駿一郎。主演は「船頭姉妹」の江原真二郎と「抜打ち浪人」の中原ひとみ。そのほか「血まみれの決闘」の岡田英次、「殺人者を逃すな」の木村功、さらに東野英治郎、宮口精二、加藤嘉、藤里まゆみ、岸輝子など。色彩はイーストマン東映カラー。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督今井正
原作水木洋子
出演江原真二郎 中原ひとみ 楠田薫 岡田英次 鈴木保 霞凉二 田中邦衛 植松鉄男 井川比佐志 小瀬朗 戸田春子 山中藤子 友野博司 加茂嘉久 岡野正純 豊野弥八郎 高須準之助 篠原弘一 須賀良太郎 菅原壮男 平岡牧子 正城睦子 石橋暁子 小林利江 田上和江 山本イサ子 安孫子康江 茅里華 木村梢 村岸令子 中村是好 東野英治郎 岸輝子 嵯峨善兵 山本緑 宮口精二 滝沢アキ和 長岡輝子 北城真記子 藤里まゆみ 加藤嘉 松本克平 神田隆 牧野狂介 佐原広二 生信賢三 清村耕次 外野村晋 陶隆 田畑公伸 高津住男 蜷川幸雄 若月謙之 大源寺英介 小塚十紀雄 木村功 上田忠好 荒木道子 三津田健 北沢彪 増田順二 杉義一 片山滉 高橋京子 織本順吉 梅津栄 岩上瑛 田部井正代 近衛秀子 和田愛子 桧有子 若木悦子 佐渡谷きぬ子 曽根秀介 不忍郷子 芥川笑子
配給 東映
制作国 日本(1957)
上映時間 133分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「牧子嘉丸」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2022-04-23

今井正監督・水木洋子脚本の名作で、江原・中原のコンビが初々しいが、脇役を務める楠田薫・長岡ようこ・岡田英二・木村功などの演技人が素晴らしい。
上野・渋谷・市川などのロケーションも懐かしい。

最終更新日:2023-02-28 10:44:16

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