蜂の旅人 作品情報

はちのたびびと

春が訪れようとする北ギリシャの村で、結婚式が行われている。花嫁の父スピロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は長年勤めてきた小学校教師を唐突に辞職したばかりで、家族との別離を決意していた。婚礼が終わるや否や、彼は父祖代々の巡礼の旅に出る。花の咲く土地に逗留しては蜂を放し、蜜を吸わせては旅を続ける伝統の旅路だ。道中でヒッチハイクをしていた少女が彼につきまとい、宿の部屋にまで闖入する。彼女はスピロを誘惑するが彼は無視。すると幼なじみだという青年を連れてきた。夜、スピロが目を覚ますと、隣のベッドで二人が交わっていた。あえぐ男の裸体の下から黙って自分を見つめる少女の眼差しに、スピロは慌てて部屋を飛びだした。彼は一人旅を続け、旧友ニコス(ニコス・クーロス)と共にゲリラ時代の仲間セルジュ(セルジュ・レジアニ)を病院に見舞う。三人は海岸で酒を酌み交わし、歴史の中で失ってしまった理想に思いを馳せた。再び巣箱を置くために滞在した街でスピロは少女を見かけ、隠れる。彼はアテネに妻アンナを訪ねて旅に誘うが、妻は夫の接吻に涙を流すだけだった。スピロは少女を若者たちの所から強引に連れ出す。フェリーの上で唇を奪おうとする彼に、彼女は激しく抵抗した。スピロは少女を連れて長女のアンナを訪ねた。かつて家出した彼女は駆け落ちした夫とガソリンスタンドを経営していた。生まれ故郷の町で、彼は少女を広場に残して自分の生家を訪ねる。酔った少女は戻ってきた彼の手を噛み、その血を懸命に吸った、二人は彼の旧友(ディノス・イリオプロス)の所有する映画館に泊まり、スクリーン前で儀式のように交わる。そのあと二人は町で酒を飲み、彼女は去る。翌日、スピロはマスクもつけずに養蜂を解き放ち、無数の蜂に刺されて倒れる。

「蜂の旅人」の解説

ギリシャ北部を旅する初老の養蜂家を通して、20世紀という歴史を背負った“老い”のあり方を描く、寓意にあふれた映像詩。「ユリシーズの鐘」の現代ギリシャ映画の巨匠、テオ・アンゲロプロスの、いわゆる“沈黙の三部作”の第2作。製作は監督の実弟ニコス・アンゲロプス。脚本はアンゲロプロスに、ディミトラス・ノラス、そして「シテール島への船出」以来「ユリシーズの鐘」に至る全作に参加するトニーノ・グエッラが協力。撮影のヨルゴス・アルヴァニティス、音楽のエレニ・カラインドルー、美術の「こうのとり、たちずさんで」までアンゲロプロスの全作品を担当したあと急死したミケス・カラペピリスは常連スタッフ。サキソフォン独奏はジャズ・ミュージシャン、ヤン・ガルバレク。アンゲロプロスが初めて主演に国際的スターを招き、「プレタポルテ」などの名優マルチェロ・マストロヤンニが起用され、この後「こうのとり、たちずさんで」でも主演をつとめた。共演は新人のナディア・ムルージはじめアンゲロプロス作品の常連たちに加えて、「肉体の冠」「コントラクト・キラー」のフランスの名優セルジュ・レジアニが特別出演。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1996年6月22日
キャスト 監督テオ・アンゲロプロス
出演マルチェロ・マストロヤンニ ナディア・ムルージ セルジュ・レジアニ ジェニー・ルセア バシア・パナゴプルー ヤニス・ザヴラノディス コスタス・コスタントプロス クリストフォロス・ネザール ドーラ・ヴォラナキ コスタス・ティムヴィオス ストラトス・パキス アシノドロス・プルーサリス ニコス・クウロス カリオフィリア・カラベティ ディミトリス・プリカコス ディノス・イリオプロス
配給 フランス映画社
制作国 ギリシャ フランス イタリア(1986)
上映時間 122分

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最終更新日:2022-10-17 12:54:18

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