裸の町(1957) 作品情報

はだかのまち

クラシック音楽が好きな富久は、その趣味を生かしてクラシック・レコードの専門店「ロゴス堂」を開いているが、商売は不振で、その上生来の人の良さから友人の借金まで背負込んで、そのため高利の借金に苦しんでいた。富久をとり巻く高利貸の一人、増山はやはり富久の債権者の一人商売仇の大高利貸榊原に一泡ふかせるため、出し抜いて富久から金を取り立てようと企んだ。そして、富久を甘言でつり、ロゴス堂を明渡させ、その権利金三十万円を取り上げてしまった。富久の妻喜代は、最初から増山を疑ってはいたが、こうして住む家も奪われてしまったのに無気力でいる夫に愛想がつきて、ひとりで故郷に帰るといい出した。いまは何事もあきらめた富久は、その喜代を駅に送った。一方、榊原は増山に出し抜かれたと知り激怒して、この仇を必ず討つといきまいた。その頃、増山の冷酷さ、えげつなさにようやく嫌気がさした妻のさくは、増山が銀行にも預けずに床下に隠しておく莫大な金をこっそり持ち出して、もうこれ以上増山が没義道なことをしなくてすむよう、街の金融機関さくら相互協会に持ち込んだ。ところが、この協会こそ実は榊原が黒幕のインチキ金融業なのだ。これを知った増山は、さくを殴りつけると狂人のようになって榊原の家に飛んで行った。うまうまと彼の金をまき上げ仇を討った榊原は、そんな増山の姿をせせら笑った。--扉を深く降したさくら相互協会の前で、へそくりを預けた庶民たちが蒼い顔で騒いでいる。その中には、増山とさくとその子供たちもいた。その場に、とぼとぼ富久がレコード・ケースを下げて通りかかると、その前に微笑を浮かべた喜代が立った。喜びに顔を輝かす富久。そして、生命と一緒に大切にして来たレコードを売って夜店を出す、という夫の計画に喜代は新たな明るい希望を持った。

「裸の町(1957)」の解説

劇作家・真船豊の同名原作の映画化。金欲に狂う庶民生活の赤裸々な姿を描く。「智恵子抄(1957)」の八住利雄が脚色、「雨情」の久松静児が監督した。撮影は「あらくれ(1957)」の玉井正夫。主演は「山鳩」の森繋久弥、「体の中を風が吹く」の淡島千景、「忘却の花びら (完結篇)」の池部良、淡路恵子、志村喬、「近くて遠きは」の杉村春子。ほかに浪花千栄子、山崎猛、山茶花究、織田政雄など。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督久松静児
原作真船豊
出演池部良 淡島千景 森繁久彌 杉村春子 山崎猛 志村喬 浪花千栄子 淡路恵子 江幡高志 織田政雄 山茶花究 山本学 田中春男 左卜全 原保美 山内みどり 十朱久雄 天津敏 松井博子 長谷川万里子 吉川孝 常盤耕司 磐木吉二郎 田中志幸 氏家真紀 菅井きん 加藤春哉 月野道代 海野光一 赤尾関三蔵 皆川一郎
配給 東宝
制作国 日本(1957)
上映時間 113分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2022-03-05

本篇,真船豊の戯曲の上演を青年劇場アトリエで観賞,プロレタリア映画として1937年に内田吐夢監督で名高い其の内容は小津安二郎監督の初期作品を想わせる下町人情悲喜劇,戦前を舞台にしたのキャラの立つ芝居はマント姿の宮沢賢治風のお人好しな音楽愛好家等魅せて呉れる…。またジェームス三木の作風とも通じ

最終更新日:2022-07-26 11:03:47

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