刺青(1966) 作品情報

いれずみ

外に雪が舞うある夜。質屋の娘お艶は、恋しい手代の新助と手と手をとり合って駈け落ちした。この二人を引きとったのは、店に出入りする遊び人の権次夫婦だった。はじめは、優しい言葉で二人を迎え入れた夫婦だったが、権次も所詮は悪党だ。お艶の親元へ現われ何かと小金を巻きあげ、あげくに、お艶を芸者として売りとばし、新助を殺そうとしていたのだ。が、そんなこととはつゆ知らぬお艶と新助は、互いに求め合うまま狂おしい愛欲の日々をおくっていた。しかし、そんなお艶のなまめかしい姿を、権次の下に出入りする刺青師清吉は焼けつくような眼差しでみつめるのだった。そして、とある雨の晩。権次は、とうとう計画を実行に移し、殺し屋三太を新助の下に差しむけた。だが、必死で抵抗した新助は、逆に三太を短刀で殺してしまった。ちょうどそのころ、土蔵に閉じこめられていたお艶は、刺青師清吉のために、麻薬をかがされ、気を失い、その白い肌一面に巨大な女郎蜘蛛の刺青をほどこされた。恍惚として見守る清吉の姿は、刺青の美しさに魂を奪われたぬけがらのようであった。やがて眠りから醒めたお艶は、この刺青によって眠っていた妖しい血を呼び起こされたように、その瞳は熱をおびて濡れていた。それからというものお艶は辰巳芸者染吉と名を改め、次々と男を酔わせていった。が、昔のやさしいお艶の姿を忘れきれない新助は嫉妬に身をやき、染吉と関係を持った男を次々と殺し、ついにある夜、短刀を持って染吉に迫った。だが新助には染吉を殺すことはできず、逆に染吉が新助を刺した。一部始終をかいま見ていた清吉は、遂にたえきれず自らが彫った女郎蜘蛛を短刀で刺し、自らも命を絶った。死んでいく染吉の顔には、すでに男をまどわした妖しい影はなく、優しいお艶の安らぎの顔があった。

「刺青(1966)」の解説

谷崎潤一郎の同名の原作を、「悪党」の新藤兼人が脚色、「清作の妻」の増村保造が監督した文芸もの。撮影は「悪名無敵」の宮川一夫。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督増村保造
原作谷崎潤一郎
出演若尾文子 長谷川明男 山本学 佐藤慶 須賀不二男 内田朝雄 藤原礼子 毛利菊枝 南部彰三 木村玄 岩田正 藤川準 薮内武司 山岡鋭二郎 森内一夫 松田剛武 橘公子
配給 大映
制作国 日本(1966)
上映時間 86分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2021-07-09

女の情念の世界が美しくも逞しく描かれた…。井原西鶴の様なt世俗的なouchも盛り込まれた新藤兼人のシナリオも光る。撮影は名匠・宮川一夫

最終更新日:2024-01-21 02:00:05

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