青春の蹉跌 作品情報

せいしゅんのさてつ

A大学法学部に通う江藤賢一郎は、学生運動をキッパリと止め、アメリカン・フットボールの選手として活躍する一方、伯父・田中栄介の援助をうけてはいるが、大橋登美子の家庭教師をしながら小遣い銭を作っていた。やがて、賢一郎はフットボール部を退部、司法試験に専念した。登美子が短大に合格、合格祝いにと賢一郎をスキーに誘った。ゲレンデに着いた二人、まるで滑れない賢一郎を背負い滑っていく登美子。その夜、燃え上がるいろりの炎に映えて、不器用で性急な二人の抱擁が続いた。賢一郎は母の悦子と共に成城の伯父の家に招待された。晩餐の席、娘・康子と久しぶりに話をする賢一郎。第一次司法試験にパスした賢一郎が登美子とともに歩行者天国を散歩中、数人のヒッピーにからまれている康子を救出したことから、二人は急速に接近していった。第二次試験も難なくパスした賢一郎は、登美子との約束を無視して、康子とデートをした。やがて第三次試験も合格。合格すること、それは社会的地位を固めることであり、康子との結婚は野心の完成であった。相変らず登美子との情事が続いたある日、賢一郎は康子との婚約を告げたが、登美子は驚かず、逆に妊娠五ヵ月だと知らせた。あせる賢一郎は、登美子を産婦人科に連れて行き堕胎させようとするが医者に断わられる。不利な状況から脱出しようとする賢一郎だが、解決する術もなく二人で思い出のスキー場へやって来た。雪の中、懸命に燃えようとする二人の虚しい行為。一緒に心中しよう、と登美子が言う。雪の上を滑りながら賢一郎は登美子の首を締めていた。登美子の屍体を埋めた斜面に雨が降る……。賢一郎と康子の内祝言の宴席。賢一郎は拍手の中、伯父や康子を大事にしていく、と自分の人生感を語るのだった。賢一郎は再びフットボールの試合に出た。野性に帰った動物のように駈け廻った。その時、二人の刑事がグラウンドに近づいた。賢一郎は何処へも逃げることができず、ボールを追って走った。タックルを受けて地面に叩きつけられる。その上に何人ものタックラーが重なった。ボールを抱えたまま、動かない賢一郎……。

「青春の蹉跌」の解説

野望を持って社会に挑戦した青年の、情熱、孤独感、焦燥、そして破滅に至るまでの生きるための闘いを描く。脚本は「濡れた荒野を走れ」の長谷川和彦、監督は「鍵(1974)」の神代辰巳、撮影も同作の姫由真左久がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1974年6月29日
キャスト 監督神代辰巳
原作石川達三
出演萩原健一 桃井かおり 檀ふみ 河原崎建三 赤座美代子 荒木道子 高橋昌也 上月左知子 森本レオ 泉晶子 くま由真 中島葵 渥美國泰 北浦昭義 山口哲也 加藤和夫 下川辰平 久米明 歌川千恵 中島久之 芹明香 堀川直義 守田比呂也
配給 東宝
制作国 日本(1974)
上映時間 85分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-11-18

「青春の蹉跌」は、石川達三の同名小説の映画化だが、野望を軸に展開する原作に比べ、長谷川和彦の脚色、神代辰巳の演出は、1970年代前半の虚脱感が漂う、全く印象の違った作品になっている。

カットバックを多用し、説明を極力排した映像に、製作当時の時代背景が滲み出ていて、ディテール描写に独特な魅力があった。

例えば、主人公の萩原健一が、道を歩いている時、横にある鉄製の手摺をフーッと触っていくと、ガタガタガタと音がする。

そういう何気ない描写に現実感が出ていて、神代辰巳監督の映像感覚の鋭さを感じさせる。

青春のある図式というものを、上手く活かして、最後の結末も奇麗な収まりかたであったと思う。

最終更新日:2023-11-28 16:00:02

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