喜劇 駅前旅館 作品情報

きげきえきまえりょかん

“私、駅前の柊元(くきもと)旅館の番頭でございます”生野次平は三十年の経験をもつ「お帳場様」である。上野界隈も昔とはずい分変ったものだ。柊元旅館は今日も修学旅行の団体客でごったがえしている。馴染みの旅行社の添乗員・小山が忙しく中学生をさばく。次平は山田紡績の社長一行のなかの女客に二の腕をつねられた。その女客は女中のお京に伝言を残すと発っていった。次平には気の合った番頭仲間が四人いた。そのうちの高沢に尻尾をつかまれ、今度の慰安旅行の幹事にされた。その役は艶聞を立てた者に振りあてられることになっていたのだ。馴染みの飲み屋・辰巳屋のお辰のところで行先を江の島と決めた。夏の江の島には全国から番頭たちが客引の腕をみがきにくる。昔、ここで次平や高沢は芸を張り合ったものだ。次平は彼をつねった女のことをやっと思い出した。於菊--江の島時代の旅館の豆女中だった。間もなく、例の山田紡績の女工たちの団体がやってきた。於菊が保健係の先生と共に引卒していた。次平は席を設けて於菊と会ったが、“旅の恥はかきすてというような気持……”といった於菊の言葉が彼のカンにさわった。社長の妾で工場の寮長に納って満足気な女の手前勝手だ。“お前、宿へ帰んなよ”彼には昔流の意地があった。--下級旅館の強引な客引・カッパの連中が格元に泊った女学生三人を怪我させた。次平は主人から怒鳴られ、小山は自分の客から怪我人が出てクサった。次平は一計を案じ、上野駅前浄化運動を始め、カッパ連中を締め出す看板を一帯にめぐらした。本部は辰巳屋に置いた。カッパ連は次平を出せと柊元に押しかけた。因っているお内儀を助けようと、次平は暇乞いの口上を述べたが、主人がそれを利用し、本当に彼をクビにした。彼はさっと最後の客引きの手際を見せるとそのままを消した。その夜、小山もお京を連れて柊元を出、大阪を目指した。次平は追ってきたお辰と一緒に日光行の二等車に収っていた。住み慣れた上野の火がのろのろと二人の目前を動いていった。

「喜劇 駅前旅館」の解説

雑誌『新潮』に連載されて好評を博した井伏鱒二の原作を、「季節風の彼方に」の八住利雄が脚色したもので、駅前旅館のあけくれと、番頭稼業を描いた喜劇。「負ケラレマセン勝ツマデハ」の豊田四郎が監督、「家内安全」の安本淳が撮影した。出演は「欲」の森繁久彌・伴淳三郎、「ぶっつけ本番」のフランキー堺・淡路恵子「大番 (完結篇)」の淡島千景、そのほか草笛光子・三井美奈・浪花千栄子など。色彩はイーストマンカラー。パースペクタ立体音響。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督豊田四郎
原作井伏鱒二
出演森繁久彌 森川信 草笛光子 藤木悠 三井美奈 都家かつ江 伴淳三郎 多々良純 若宮忠三郎 フランキー堺 淡島千景 淡路恵子 左卜全 藤村有弘 浪花千栄子 若水ヤエ子 山茶花究 大村千吉 西条悦朗 堺左千夫 水島直哉 小桜京子 谷晃 三田照子
配給 東宝
制作国 日本(1958)
上映時間 109分

ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-12-23

1958年の第1作「駅前旅館」から1969年の第24作「駅前桟橋」まで、10年余りにわたる東宝の長寿シリーズ。

この映画「駅前旅館」は、井伏鱒二の原作の小説を八住利雄が脚色し、名匠・豊田四郎が監督した作品だ。

生野次平は、上野駅前の旅館の番頭を30年勤めるベテラン。
ライバル旅館の番頭の高沢と張り合いながらも良き友。
馴染みの飲み屋・辰巳屋にはお目当てのお辰がいる。

上野界隈では、悪質な客引きの追放運動が始まり、次平はリーダーとして活躍するのだった。

生野次平に森繁久彌、ライバルの番頭に伴淳三郎、お辰に淡島千景が扮していて、それぞれ達者な芸を披露していると思う。

最終更新日:2024-01-02 16:00:02

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