八甲田山 完全版 作品情報

はっこうださんかんぜんばん

「冬の八甲田山を歩いてみたいと思わないか」と友田旅団長から声をかけられた二人の大尉、青森第五連隊の神田と弘前第三十一連隊の徳島は全身を硬直させた。日露戦争開戦を目前にした明治三十四年末。第四旅団指令部での会議で、露軍と戦うためには、雪、寒さについて寒地訓練が必要であると決り、冬の八甲田山がその場所に選ばれた。二人の大尉は責任の重さに慄然とした。雪中行軍は、双方が青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという大筋で決った。年が明けて一月二十日。徳島隊は、わずか二十七名の編成部隊で弘前を出発。行軍計画は、徳島の意見が全面的に採用され隊員はみな雪になれている者が選ばれた。出発の日、徳島は神田に手紙を書いた。それは、我が隊が危険な状態な場合はぜひ援助を……というものであった。一方、神田大尉も小数精鋭部隊の編成をもうし出たが、大隊長山田少佐に拒否され二百十名という大部隊で青森を出発。神田の用意した案内人を山田がことわり、いつのまにか随行のはずの山田に隊の実権は移っていた。神田の部隊は、低気圧に襲われ、磁石が用をなさなくなり、白い闇の中に方向を失い、次第に隊列は乱れ、狂死するものさえではじめた。一方徳島の部隊は、女案内人を先頭に風のリズムに合わせ、八甲田山に向って快調に進んでいた。体力があるうちに八甲田山へと先をいそいだ神田隊。耐寒訓練をしつつ八甲田山へ向った徳島隊。狂暴な自然を征服しようとする二百十名、自然と折り合いをつけながら進む二十七名。しかし八甲田山はそのどちらも拒否するかのように思われた。神田隊は次第にその人数が減りだし、辛うじて命を保った者は五十名でしかなかった。しかし、この残った者に対しても雪はとどめなく襲った。神田は、薄れゆく意識の中で徳島に逢いたいと思った。二十七日、徳島隊はついに八甲田に入った。天と地が咆え狂う凄まじさの中で、神田大尉の従卒の遺体を発見。神田隊の遭難は疑う余地はなかった。徳島は、吹雪きの中で永遠の眠りにつく神田と再会。その唇から一筋の血。それは、気力をふりしぼって舌を噛んで果てたものと思われた。全身凍りつくような徳島隊の者もやっとのことで神田隊の救助隊に救われた。第五連隊の生存者は山田少佐以下十二名。のちに山田少佐は拳銃自殺。徳島隊は全員生還。しかし、二年後の日露戦争で、全員が戦死。

「八甲田山 完全版」の解説

劇場版「八甲田山」ではカットされた、徳島大尉が案内人たちに「八甲田で見たことは一切口外してはならん」と言うシーンを追加した「八甲田山」完全版。映画の上映から5年後、昭和57年10月6日の日本テレビ「水曜ロードショー」で初放送された。2014年4月19日より、東京・恵比寿 東京都写真美術館にて開催された「山岳映画:特集上映-黎明期のドイツ映画から日本映画の名作まで-」にて35ミリニュープリントを上映。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 2014年4月19日
キャスト 監督森谷司郎
原作新田次郎
出演島田正吾 大滝秀治 高倉健 丹波哲郎 藤岡琢也 浜田晃 加藤健一 江幡連 高山浩平 安永憲司 久保田欣也 樋浦勉 広瀬昌助 早田文次 吉村道夫 渡会洋幸 前田吟 北大路欣也 三國連太郎 加山雄三 小林桂樹 神山繁 森田健作 東野英心 金尾鉄夫 古川義範 荒木貞一 芦沢洋三 山西道宏 蔵一彦 新克利 海原俊介 堀礼文 下絛アトム 森川利一 浜田宏昭 玉川伊佐男 竜崎勝 江角英明 井上博一 佐久間宏則 伊藤敏孝 緒形拳 栗原小巻 加賀まりこ 石井明人 秋吉久美子 船橋三郎 加藤嘉 花澤徳衛 山谷初男 丹古母鬼馬二 青木卓 永妻旭 菅井きん 田崎潤
制作国 日本(1977)
上映時間 171分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、3件の投稿があります。

P.N.「水口栄一」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2020-05-19

八甲田山を観た。あまりにも衝撃的で涙ぐんでしまった。悲運な男たちのドラマはいつまでも忘れられない。

最終更新日:2022-07-26 11:03:26

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