映画『砂の器』シネマ・コンサートに期待高まる。山田洋次監督と本広克行監督が対談

映画『砂の器』シネマ・コンサートに期待高まる。山田洋次監督と本広克行監督が対談
提供:シネマクエスト

日本映画史に燦然と輝く不朽の名作『砂の器』(1974年)のシネマ・コンサートが、4月に東京と大阪で開催される。同公演は劇中のセリフや効果音はそのままに音楽パートをオーケストラが生演奏する映画上映+コンサートの複合ライブ・イベント。昨年夏に東京で行われた公演の再演となる。来るシネマ・コンサート開催に際して、同作で橋本忍と共に脚本を手掛けた映画監督の山田洋次と、自身の代表作の中でオマージュを捧げるほどの『砂の器』ファンである映画監督の本広克行が『砂の器』について語った。

――本広監督は映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)で、『砂の器』のキーワードでもある「東北訛りのカメダ」を使って同作へのオマージュを捧げた。老練な刑事(いかりや長介)と若い熱血刑事(織田裕二)のコンビは、『砂の器』の丹波哲郎と森田健作の設定にも通じる。

本広:踊る大捜査線チームって邦画が大好きで。で、『砂の器』をちょっと頂いちゃいまして(笑)。

山田:あの黒澤明監督も言っていたけど、色々な映画をいっぱい見て、どんどん真似しなきゃダメだよって。僕も一生懸命真似しますよ、このシーンをどう撮ろうか迷っている時には。今度の新作(5/25公開『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』)では、黒澤さんの『生きる』(1952年)の喫茶店での場面を参考にしてみました。志村喬が階段降りるシーンを西村まさ彦で(笑)。

本広:エーッ!ネタバレしちゃっていいんですか!

山田:昔、『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)で喧嘩したことがあるんだよ。ポスターは“黄色いハンカチで”って言ったら、そんなのネタバレになるからダメだって宣伝部が言うからね。「そんなことでつまらなくなる映画なんか作ってないよ!」って(笑)。

――『砂の器』は、ラスト40分で流れる組曲「宿命」に象徴されるように、音楽なくして語れない作品だ。本広監督は『交渉人 真下正義』(2005年)ではラヴェルのボレロ全編をまるごと使ったり、新作『曇天に笑う』(3/21公開)では冒頭からサカナクションを起用するなど、音楽にはこだわりをみせる。

本広:映画学校でシナリオ7割、撮影3割と習ってきたんですけど、僕はそこをシナリオ5割、映像+音楽5割で考えていて、撮影中から頭のなかでは自分のイメージする音楽がガンガン鳴っているんです。

山田:僕も大事なシーンでは、自身でイメージしたCDを撮影現場で鳴らして、それにあわせて芝居してもらうこともありますよ。マーラーとか、ニーノ・ロータとか。『砂の器』のシナリオでは、秀夫少年が走り出すシーンに「ここにシンバルが鳴る」と書きこみましたよ。

本広:僕も『交渉人 真下正義』という映画で、ラヴェルのボレロを流して最後にシンバルを鳴らして、その瞬間に捕まえるというネタをやりました!

――『砂の器』は橋本忍と山田洋次の共同脚本だ。2人の作業はどのようにして進められて行ったのだろうか。

本広:橋本さんとは、どこかに籠もって脚本を書かれたんですか?

山田:当時、橋本さんが大きな和文タイプライターを持っていらしたので、橋本さんの自宅で作業したのが多かったかな。ある日、橋本さんが「洋ちゃん、いいアイデアがあるんだよ!いったん打ち切られた捜査会議が再開され、刑事が口火を切る。と同時に和賀英良が指揮棒を振り下ろす。」と一連の流れを話してくれて。これは急いで書かなきゃ!と、かなりのスピードで書いていったかな、2週間ぐらいで。あの時の橋本さんの「よしやるぞ!」っていう高揚感は横で見ていて、とても嬉しかったねぇ。いま僕は凄いものを見てるぞって。橋本さんからは、ふたりの旅を思いつくまま、色んなシーンを書いてくれと言われて、僕も一生懸命考えました。その中で採用されるものもあれば、採用されなかったのもあるんだけど。「よく書いてくれたよ、あれで助かったよ」と橋本さんに言われたのを憶えています。

本広:あの親子の旅のところはセリフや効果音がなく、音楽のみなんですよね。あれには、びっくりしました。凄く思いきってますよね。パントマイムの芝居を見ているような。ブルーレイで見直して気が付いたんですが、秀夫少年の額の傷が、大人になった和賀英良にも、ちゃんとあるんですよね。細かいなぁと。

山田:そうでしたか。実は、あの映画は脚本書き上げて、すぐに映画にはならなかったんです。脚本は10年くらいお蔵入りしちゃったけど。その間に僕は監督になったので、あの映画が撮影に入った時は、助監督についていないんですが、噂には伝わってきました。野村(芳太郎)監督が撮影中から粘りを見せていて、凄い映画が出来上がりそうだって。試写を観て、シナリオのイメージは、いい意味で裏切られた。こんなにも膨らんで豊かなものになるんだなぁと。

――いよいよ再演が迫る『砂の器』シネマ・コンサート。昨年の初演も観た山田監督は。

山田:橋本さんが、この作品は「文楽だな」と言っていた。人形(役者)の物語りがあって、浄瑠璃という音楽が加わっていく。音楽がね、時としてセリフに代わっていくんだよ。去年観たこのシネマ・コンサートはほんと、素晴らしいんだよ、映画とはまた違う迫りくる感動なんですよね。終わった後のあんなに長い観客の拍手ってなかなかないです。シネマ・コンサートにこんなにぴったりの作品はありません。

本広:今度は僕も観に行きます!

<映画『砂の器』シネマ・コンサート2018/公演概要>
日時:2018年4月22日(日)開場16:00/開演17:00(終演20:00予定)
会場:渋谷・NHKホール
チケット価格 :9,800円(税込/全席指定)※未就学児入場不可
※大阪公演も開催 ※詳細はホームページにて

シネマ・コンサート上映映画:
上映作品:映画『砂の器』(松竹・橋本プロ=提携作品/1974年10月19日劇場公開)
上演時間:2時間23分(途中休憩20分あり/上映作品は2005年リマスター版)
原作:松本清張/監督:野村芳太郎/脚本:橋本忍、山田洋次
撮影:川又昻/音楽監督:芥川也寸志/作曲:菅野光亮
出演:丹波哲郎/加藤剛/森田健作/島田陽子/山口果林/加藤嘉/緒形拳/佐分利信/渥美清 他
シネマ・コンサート出演:
指揮:和田薫 / 演奏:日本フィルハーモニー交響楽団 / ピアノ:近藤嘉宏

<映画『砂の器』シネマ・コンサート/公式サイト>
http://promax.co.jp/sunanoutsuwa/

(C)1974・2005 松竹株式会社/橋本プロダクション

最終更新日
2018-03-14 12:00:06
提供
シネマクエスト(引用元

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