妻を亡くしても泣けない男を、精神科医・星野概念が徹底解説!映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』トークイベント

妻を亡くしても泣けない男を、精神科医・星野概念が徹底解説!映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』トークイベント
提供:シネマクエスト

日時:1月11日(水)
場所:ユーロライブ
登壇者:星野概念、森直人


ジェイク・ギレンホール主演(『ナイト・クローラー』)の主演最新作『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(原題:Demoliton)が2017年2月18日(土)より公開となる。メガホンを取ったのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』『わたしに会うまでの1600キロ』などで知られる、ジャン=マルク・ヴァレ監督。『ナイトクローラー』で狂気的な演技で人々を魅了させたジェイク・ギレンホールが、妻を亡くしたのに涙の一滴すら流せず、自らの感情とうまく向き合えない哀しみと虚しさを、繊細な演技で見事に表現し、新境地を開拓している。今回、映画評論家の森直人をMCに、総合病院に勤める精神科医でありながら、ミュージシャンとしても活躍している星野概念をゲストに迎え、映画上映後にトークイベントが開催された。

入団後ずっとカドリーユ(一般的に〝コール・ド・バレエ〟と呼ばれ、群舞を踊るダンサー。階級的には一番下位)だったボラックは、バンジャマン・ミルピエ芸術監督に積極的に起用され、スジェ(「セカンド・ソリスト」と呼ばれる、上から三番目の位。ソロを踊る事が多く、まれに主役も兼ねる)時代にすでに『くるみ割り人形』のクララ、『ロミオとジュリエット』のジュリエット、『パキータ』で主演し、毎年昇進を果たしてきた。愛らしい容姿を持ち、特に情熱的なジュリエット役は高い評価を得た一方で、フォーサイス、マクレガー、ウィールドンなどの振付家の現代作品も得意としており、振付家の創造意欲をかき立てるミューズとなっている。昨年は『エトワール・ガラ2016』で来日し多くのファンを魅了、さらに来年3月のパリ・オペラ座来日公演でも『ラ・シルフィード』『ダフニスとクロエ』に出演が決定している。

昨年末に試写で本作を鑑賞していた星野さん。登壇後まず感想を聞かれ、これまで映画を観ても泣くことはほとんどなかったにも関わらず、本作で泣いたことを明かし、「(公開は2017年2月だが)2016年に観た映画の中でベスト1でした」と絶賛した。

妻を突然事故で亡くしても、一滴も泣けず、義理の父の一言がきっかけで破壊行動に走る主人公・デイヴィス。彼の精神状態に関して、「妻を急に失って、いきなりそのにショックに正面から向き合うと自分が壊れてしまう。それを知らないうちに抑圧して“無意識のクローゼット”に閉じ込めてしまっていたのでは」と解説した。ブルドーザーで家を破壊するなど、常軌を逸した行動をするディヴィスを、「現実だったらその前に入院とかしてると思うんですけど(笑)」と、冷静な診断で会場を笑わせた。

デイヴィスが変化していくきっかけとなる、シングルマザーのカレンと、その息子・クリスの話題になると、カウンセリングにおいて重要なポイントは、“傾聴と共感”と語った星野さん。自動販売機の不具合というクレームから、自分のストーリーを手紙としてカレンに送り続け、彼女もそれを受け止め続けたことが、デイヴィスにとっての心の拠り所であったと解説した。
また、ある秘密を抱え、劇中でデイヴィスとともに家を破壊し、ラストにとっておきの仕掛けをするカレンの息子・クリスとの関わりについては、「あんな風に子供と一緒になって踊ったり、家を壊したり、大人が“退行する”時って癒しに繋がる瞬間なんです。夏祭りや神輿を担いで大人たち我を忘れて熱くなると時と似ているんですけど、その退行もまた、デイヴィスにとっての治療になったのでは。」と語った。

作品について熱く語る中、原題が『DEMOLITION(破壊)』であるにも関わらず、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』という邦題に関しての話題になった際、「もうこれを話したくて堪らないんですよね!」と前のめりに。「原題と邦題は、主人公の心の変化、つまりbefore/afterを表している秀逸なタイトルだと思います。僕が泣いたのは(邦題の)理由がわかったシーンだったんです。カレン&クリス親子との関わりが救いとなり、デイヴィスの“無意識のクローゼット”を開ける隙間ができた。“無意識のクローゼット”に、もし番人がいるとしたら、『今なら(どんな現実でも)向き合えるから、この感情行ってよし!』ってその扉を開けたんじゃないかなと思って、涙が出ました」と語った。

精神科医ならではの専門的な視点で考察しつつも、「偉い先生もたぶんこうやって言うと思うんですけど・・」という謙遜したフレーズをところどころで挟み、初めてのトークショーとは思えない程会場を笑わせた星野さん。「まだ4時間ぐらい喋れます」と作品への熱い思いを口にし、大盛況のうちにイベントは終了した。

最終更新日
2017-01-13 09:00:40
提供
シネマクエスト(引用元

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