北斎漫画 作品情報

ほくさいまんが

鉄蔵と娘のお栄は左七の家の居候になっている。鉄蔵は、貧しい百姓の生まれだが、幼時、御用鏡磨師、中島伊勢の養子となった。巧みに絵を描くので、絵師の弟子となるが、尻が落ちつかず、幾人もの師から破門された。一方、左七は侍の生まれたが、読本作家になりたいと志し、下駄屋の養子に入り込んだ。左七の女房お百は、亭主が黄表紙本などを読むのを心よく思っておらず、さらに、朝から晩まで絵を描いている居候の父娘に我慢がならない。そんなある日、鉄蔵ほお直という女に出会った。鉄蔵は一目でお直にのめり込み、彼女を描くことで、つき当っている壁を破ろうとするが、不思議な魔性に手応えがない。鉄蔵ほお直を養父、伊勢に紹介することで、彼女と別れ、また金もせびることにした。その伊勢も、お直の魔性にとり憑かれ、首をくくって死んでしまう。その頃、お百が死んだ。そして、間際に、立派な作者になってくれ、滝沢馬琴という名は良い名だと言い残す。左七はせきを切ったように書き始めた。たちまち流行作家となった。今や父と長屋暮しのお栄は左七を訪ね、読物の挿し絵を父に描かせて欲しいと頼む。左七は喜んで引き受けた。鉄蔵が北斎の名で描いた絵は評判になり、放浪の旅で「富嶽三十六景」が生まれた。そして、北斎は八十九歳、お栄は七十歳、馬琴は八十二歳となった。ある日、お栄がお直と瓜二ツの田舎娘を連れてきた。「お直ッ」と叫ぶ北斎。馬琴は失明しかけているが、お直と娘を混同することはなかった。そこで「俺の絵でお前は有名になった」と馬琴に話す父に、お栄は「あたしか左七さんに頼んだんだ。一生嫁に行かなかったのも、父やんのためじゃない、左七さんのためだ」と告白する。そこで馬琴は「あんたに結婚を申し込む」と大見栄を切った。一人になった北斎は“お直”を裸にすると、一気に描き始めた。巨大な蛸が、裸女に絡みつき、犯している図だ。かくして、傑作「喜能会之故真道」の蛸と海女の性交の図が出来上がった。馬琴が亡くなった。そして、北斎も亡くなった。二人の辞世にお栄は「死ぬときゃ、誰でも、ていさいのいいこと言い残すもんだ」と咳いた。お栄の顔に涙が流れた。その顔は、北斎の描いた赤富士のように、異様な、美しさと悲しみをたたえていた。

「北斎漫画」の解説

『富嶽三十六景』の他に『北斎漫画』で春画の大家としても知られる葛飾北斎と娘・お栄の一生、ふんけいの友、滝沢馬琴との交流を描く。矢代静一の同名の戯曲の映画化で、脚本・監督は「絞殺」の新藤兼人、撮影は丸山恵司がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1981年9月12日
キャスト 監督新藤兼人
原作矢代静一
出演緒形拳 西田敏行 田中裕子 樋口可南子 乙羽信子 佐瀬陽一 殿山泰司 宍戸錠 大村崑 愛川欽也 梅津栄 戸浦六宏 観世栄夫 大塚国夫 森塚敏 今井和子 フランキー堺
配給 富士映画
制作国 日本(1981)
上映時間 119分

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ユーザーレビュー

総合評価:4.67点★★★★☆、4件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-02-20

歴史上の人物として、あるいはその作品の名前はよく聞くが、生身の人間としての人物像までは詳しく知らない葛飾北斎と滝沢馬琴。
もちろん史実とは違ったフィクションだろうが、生身の人間として身近に感じられる作品になっていると思う。

北斎の生き様には色々意見が出るとは思うが、春画にかける情熱は、強く感じられるような表現になっている。
緒形拳、西田敏行という配役もよく、エンターテインメント作品としても面白く仕上がっていると思う。
もちろん当時話題となった、樋口可南子や田中裕子の脱ぎっぷりの良さも評価したい作品だ。

最終更新日:2024-03-01 16:00:02

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